取引先モニタリングで、与信リスクを未然に防ごう!
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取引先モニタリングの重要性
取引先の与信評価や与信限度額が、取引開始時に設定したままになっていないでしょうか。
企業の業績や財務状況、経営体制、取引環境は常に変化しています。取引開始時に十分な与信審査を行っていたとしても、その後の変化を把握できなければ、現在の信用力と取引条件にずれが生じる可能性があります。
たとえば、取引先の業績が悪化しているにもかかわらず、過去に設定した大きな与信限度額のまま取引を続ければ、貸倒れや焦げ付きにつながるおそれがあります。反対に、業績が好調な取引先に古い限度額を据え置けば、取引拡大の機会を逃しかねません。
こうした信用力の変化を見落とすと、その影響は一取引の損失にとどまらず、自社のキャッシュフローや収益、経営判断、さらには企業価値にまで及ぶことがあります。
また、景気や業界環境によって、企業の倒産傾向や適切なリスク水準も変わります。厳しすぎる基準は販売機会の損失を招き、緩すぎる基準は貸倒れリスクを高める要因になります。
そのため、取引先の変化を継続的に把握し、必要に応じて与信評価や与信限度額、自社の与信基準を見直すことが重要です。その時点の信用状態に即して与信を適正化することで、リスクの見落としを防ぎながら、取引拡大の機会も捉えやすくなります。
取引先の定点管理方法
では、取引先の変化を継続的に把握するには、どのような情報を確認すればよいのでしょうか。
取引先の定点管理では、定量評価・定性評価・外部評価の3つの観点から必要な情報を継続的に収集し、業績や信用力の変化、その兆候を早期に捉えることが重要です。
また、情報を収集するだけでなく、変化が見られた場合には、その内容が取引に及ぼす影響を確認し、必要に応じて与信評価や与信限度額を再評価します。
そのうえで、取引額や支払条件などを見直し、取引先の実態に即した適切な取引条件へ調整することが大切です。
以下では、定点管理に必要な3つの評価について、それぞれ確認すべき情報を解説します。
定量評価
定量評価では、貸借対照表や損益計算書などの財務情報をもとに、取引先の財務状態を数値で評価します。一般的には、与信管理上重要な指標を抽出し、それぞれの水準に応じて点数を付け、定量評価モデルを作成します。 主な分析項目は、以下のとおりです。
① 規模分析
売上高、純資産(自己資本)額
② 安全性分析
自己資本比率、借入月商比、流動比率、借入依存度
③ 収益性分析
総資本経常利益率、売上高経常利益率、増減収率、経常収支率
④ 回転率分析
総資本回転数、売掛債権回転期間、棚卸資産回転期間
評価にあたっては、決算書に記載された表面的な数値をそのまま用いるのではなく、不良債権や含み損益などを加味し、財務実態に即した数値へ修正することが重要です。
取引先から決算書を入手できない場合は、信用調査会社の企業概要データなどを活用し、売上高、純利益額、従業員数、資本金、売上高純利益率、増減収率・増減益率といった入手可能な指標から評価します。
ただし、定量評価だけで取引先の信用力を的確に把握できるとは限りません。最終的な評価の精度を高めるためには、取引先から直接得た現場情報や定性要因も組み合わせて判断する必要があります。
定性評価
定量評価だけでは、取引先の信用力を正確に判断できない場合があります。そのため、数値では捉えにくい定性情報を確認し、必要に応じて格付を調整します。主な確認項目は、以下のとおりです。
① ヒトの面
経営者の能力や資産背景、親会社の信用力や支援動向などを確認します。親会社から継続的な支援が期待でき、取引先の信用力を補完すると判断できる場合は、プラス評価の要因となります。
② モノの面
業界内での順位や業界特性、参入障壁などを確認します。競争力があり、安定した経営が見込める場合はプラス評価につながります。
③ カネの面
取引金融機関との関係や金融支援の状況などを確認し、資金調達力や金融面での信用力を評価します。
④ その他の情報
信用不安情報の有無や、定性情報の推移に不審な点がないかを確認します。信用不安情報がある場合は、内容や信頼性を精査し、必要に応じて評価を引き下げます。
取引判断では、格付に加え、情報入手の可否や利益率、担保を考慮した正味リスクも確認します。
ただし、長年の取引関係や高い利益率、担保の取得は、取引条件の判断材料であり、取引先の信用力を引き上げる根拠にはなりません。
また、定性評価は主観が入りやすいため、客観的な事実に基づく判断基準と調整ルールをあらかじめ定めておくことが重要です。
外部評価の活用
取引先の信用力を評価する際は、自社による定量評価・定性評価に加え、信用調査会社の評点や企業分析サービス会社の格付など、外部評価を活用する方法があります。特に、取引先から財務諸表を入手できない場合には、外部機関の評価が重要な判断材料となります。
外部評価を活用する主なメリットは、以下のとおりです。
① 自社とは異なる評価尺度を取り入れられる
外部の指標を活用することで、自社の財務体力や与信管理ルールと、自社が抱える与信リスクを比較するための基準を得られます。
② 属人的でない一次スクリーニングができる
汎用性が高く、簡便で統一された指標を用いることで、担当者による判断のばらつきを抑えられます。
③ 与信管理を効率化できる
リスクの小さい取引先を一次的に選別することで、取引判断や事後管理を簡略化し、与信管理にかかる負担を軽減できます。
ただし、外部評価はあくまで一次スクリーニングのための指標です。
外部の格付や評点だけですべてを判断できるわけではないため、自社の実務や取引実態と乖離する部分については、最終的に自社で評価を調整する必要があります。
取引先の定点管理チェックポイント
取引先の変化を早期に捉えるためには、信用状況や経営状態の悪化が、どのような兆候として表れるのかをあらかじめ把握しておくことが重要です。
信用状況や経営状態の悪化につながる兆候として、主に以下が挙げられます。
| リスク区分 | 定量情報 | 定性情報 |
|---|---|---|
| 2ランクダウン相当 | ・資本金300万円未満 ・自己資本比率7%未満 | ・3年以内に商号・本店所在地・代表番号を2回以上変更している ・設立後5年以内 ・2年以内に代表者・役員が2回以上交代 ・談合事件などにより数か月に及ぶ指名停止処分を受けている ・主力販売先が急に変更 |
| 1ランクダウン相当 | ・自己資本総額3,000万円未満 ・自己資本比率7%以上15%未満 ・借入依存度40%以上60%未満 ・経常利益が赤字 ・支払利息が営業利益を上回る |
・社有地や代表者私有地に、時価総額を上回る担保設定がある ・借入過大や財政状態に関する不安情報が出ている ・取引先の主要販売先で最近倒産した会社がある ・主要仕入先が取引量を減らし、取引から後退している ・役員間または労使間で重大な紛争が起きている ・官報などによる決算公告を行っていない |
| 信用悪化の可能性が高い | ・自己資本総額が3,000万円超5,000万円未満 ・当期利益が不明、または200万円未満 ・当期利益が黒字の場合で、売上高利益率が1%未満 ・売上高が20%以上減少 ・総資産が20%以上減少 |
・代表電話番号にかけても先方担当者につながらない ・従業員数が事業内容と比べて極端に少ない ・従業員数が極端に減少 ・3年以内に事業内容や目的を2回以上変更 ・主力仕入先が急に変更 ・取引先の貸倒れに関する不安情報が出ている ・廃棄物処理などにより、周辺環境に環境汚染事件が発生している ・所属業界が全体的に縮小傾向にある ・所属業界が景気変動の影響を受けやすい ・新規参入や新商品・サービスの出現により競争が激化する可能性がある |
| 経営悪化につながりうる | ・借入依存度が20%以上40%未満 ・自己資本比率が15%以上20%未満 ・当期利益額が200万円以上1,000万円未満 ・売上高または総資産が極端に増加 ・5年以内に極端な増資・減資を行っている |
・自社で把握している会社名と、ホームページまたは商業登記簿の商号が一致しない ・社有地または代表者所有地に担保設定がある ・電話帳、ホームページ、実際の代表番号が一致しない ・自社との取引内容が、ホームページの事業内容または商業登記簿の目的と一致しない ・ホームページ記載の取引銀行と担保権者が一致しない |
これらの兆候が一つ見られただけで、直ちに信用力が低下したと判断できるわけではありません。複数の情報を照合し、変化の原因や継続性、自社との取引への影響を見極めることが重要です。
取引先の経営状態が悪化、または与信限度額を超過した場合
取引先の経営状態の悪化や与信限度額の超過を把握した場合は、速やかに営業部門をはじめとする関係者へ情報を共有し、現在の取引状況を確認することが重要です。
具体的には、売掛金などの債権残高、入金遅延の有無、受注・出荷予定、今後見込まれる取引額、営業担当者が把握している取引先の状況などを整理し、追加取引によって信用リスクがどの程度拡大する可能性があるかを判断します。
そのうえで、必要に応じて、与信限度額の見直し、追加取引や出荷の一時停止、取引量の調整、支払サイトの短縮、前受金・現金取引への変更、担保・保証の取得などのリスクヘッジ策を検討します。
ただし、問題が発生するたびに対応を一から協議していては、判断の遅れや担当者ごとの対応のばらつきが生じかねません。そのため、「どのような変化や超過があった場合に報告するか」「誰が状況を確認し、取引継続を承認するか」「リスクの程度に応じて、どの対応策を講じるか」といった判断基準や対応手順をあらかじめ明確にし、営業・経理・審査などの関係部門で共有しておくことが重要です。
平時から共通の判断基準と対応ルールを整備しておくことで、異変を把握した際にも迅速かつ一貫した対応が可能となり、貸倒れリスクの拡大防止につながります。
まとめ:取引先の変化を捉え、継続的なリスク管理を
取引先の信用力は、取引開始後も業績や財務状況、経営体制などによって変化し続けます。
そのため、与信管理では、取引開始時に審査を行うだけでなく、その後の変化を継続的に捉え、与信評価や与信限度額を適切に見直すことが重要です。
業績が悪化した取引先に対して、過去に設定した大きな与信限度額のまま取引を続ければ、貸倒れや焦げ付きにつながるおそれがあります。
一方で、業績が好調な取引先に対して古い限度額を据え置けば、取引拡大の機会を逃す可能性もあります。
リスクを抑えるだけでなく、ビジネスチャンスを確実に捉えるためにも、取引先の変化に応じて与信を適正化する仕組みが必要です。
しかし、多数の取引先について、継続的に情報を収集し、評価や限度額を見直すには、相応のコストと管理工数がかかります。
リスクモンスターのモニタリングサービスでは、取引先情報の収集から与信評価までを継続的に行い、格付や決算情報、ネガティブ情報、役員・資本金などに変化があった場合には、アラートメールで通知できます。情報収集の負担を抑えながら、見直しが必要な取引先を効率的に把握できます。
また、モニタリングを有効に機能させるためには、「どの取引先を対象とするか」「変化を把握した後に誰が対応するか」「与信限度額や取引条件をどのように見直すか」といった運用ルールの整備も欠かせません。企業ごとの取引方針や管理体制に合わせた運用設計についても、ぜひリスクモンスターまでご相談ください。
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