インターネット附随サービス業
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16-1.インターネット附随サービス業【与信審査編】(産業分類コード40)
(1) 市場概要
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①営業種目
インターネット利用サポート業
ポータルサイト・サーバ運営業
アプリケーション・サービス・コンテンツ・プロバイダ業
②業界規模
総売上高 7兆7,907億円
上場企業数 72社
非上場企業数 6,321社 -
③業界サマリー
インターネット附随サービス業は、インターネットプロバイダー(以下、ISP)、クラウド、ホスティング、ドメイン管理、CDN(Content Delivery Network)、セキュリティサービスなど、インターネットを通じて、通信や情報サービスを提供する事業であり、「IT業」ともいわれる。取引形態として、直販型(BtoB型、BtoC型)と再販・プラットフォーム型(BtoBtoC型)、個人間取引支援型(BtoCtoC型)に大別される。
【業界の特性】
斯業種が提供するサービスは無形かつ非対面で提供されることが一般的で、契約手続きから課金、運用管理までがオンライン上で完結可能な点が特徴である。市場規模は、BtoB型、BtoC型ともに拡大傾向となっており、中でもクラウドサービスやセキュリティ分野の需要が増加している。斯業種においては、大規模な設備投資の必要性が低いことから、新規参入が比較的容易であるが、インターネット技術の革新速度は速く、サービスの陳腐化や模倣リスクが高いため、他社との差別化や競争力向上のためには、技術力や人的リソースが重要である。
【業界構造】
斯業種における主な事業者は、大手総合系(NTT、ソフトバンク、KDDI、楽天グループなど)と専門特化型の中堅・中小企業がおり、技術力・信頼性・事業の拡張性などが競争優位性の要素となっている。参入障壁が低いために新規事業者が多く、差別化のために価格競争が激化する傾向にある。斯業種の事業としては、「ISP、ホスティング」事業と「クラウド、セキュリティ」事業の二極化が進行している
【法律関連】
ISPやクラウド、ホスティング提供事業者は、「電気通信事業法」に基づき、総務省への届出や登録が必要となり、通信の秘密保護や契約義務が課せられる。また、クラウドサービスやメール配信、ユーザー向けサービスを提供する事業者には、「プロバイダ責任制限法」や「個人情報保護法」の遵守が求められ、違法コンテンツ対応や個人情報管理に関する法的責任が発生する。加えて「不正アクセス禁止法」や「サイバーセキュリティ基本法」、「著作権法」により、セキュリティ体制の整備とインシデント対応が求められる。
(2) 業界の特徴・商流・収益構造
【業界の特徴】
斯業種は、インターネットを通じて情報や分析・加工したデータを提供する事業、アプリケーション機能をネットワーク経由で提供する事業、インターネット上での取引プラットフォームを運営する事業など、インターネットを基盤としてサービスを提供する事業全般を指す。いずれの事業においても、労働集約型の性質が強く、システム開発や運用にかかる費用が必要となる。ホームページやインターネットサービスのリリースまでは、開発コストをはじめとした先行投資が発生するため、開発工数の増加やリリースの遅延が発生すると、収益計画に遅れが生じ、資金繰りに影響を及ぼす可能性が高まることから、資金調達や運用の計画性が重要となる。
【商流】
斯業種における商流は多様化しており、複数の取引形態が併存している。
直販型(BtoB型、BtoC型)では、斯業者が企業や一般消費者に対して、サービスを直接提供し、対価を得る典型的な事業形態となっている。主なサービスは、ISP、ホスティング、クラウドインフラ(IaaS/PaaS)、セキュリティサービスなどがあげられる。
再販・プラットフォーム型(BtoBtoC型)は、斯業者がアプリ開発会社やプラットフォーム運営会社などの中間事業者にサービスを提供し、中間事業者がそれらを自社サービスに組込み、最終的にエンドユーザーに再販する構造である。主なサービスは、クラウドインフラ(IaaS/PaaS)、CDNなどがあげられる。
個人間取引支援型(BtoCtoC型)は、斯業者が個人消費者向けにプラットフォームを提供し、そのプラットフォーム上で一般ユーザー同士が商品やサービスを売買する CtoC 取引を支援する仕組みであり、サービス利用料や手数料が収入源となっている。主なサービスはフリマアプリ、オークションサイトなどがあげられる。
【収益構造・財務分析】
(収益構造)
斯業種は、サービス利用における顧客の月額利用料が主な収入源となるストックビジネスである。システム開発・運用にかかる人件費が固定費として発生するため、売上高に占める固定費の割合が高くなりやすいものの、サービスを提供するためのコストは、ユーザー数の多寡で大きく変わるものではないため、売上高が損益分岐点を超えると利益率は上昇しやすい。斯業種においては、「ユーザー数の拡大」と「解約の防止」が利益の源泉となるため、解約率の上昇は収益の悪化を招く。なお、斯業種の中ではホスティング事業やクラウドサービス事業では設備にかかる初期投資が過大になりやすいため、損益分岐点が高い。
(収益性分析)
斯業種における各種利益率は、情報通信業全体と比較していずれも上回る水準となっている。中でも売上高総利益率(54.7%)の水準は高く、損益分岐点を超えた後の利益拡大が大きいことが表れている。一方で、サービス利用を拡大させるためのマーケティングコストや営業向けの人件費が嵩みやすいことから、売上高営業利益率は売上高総利益率よりも 45 ポイント以上低い水準となっている。
(安全性分析)
斯業種は、概ね大規模な設備投資を伴わずにサービス提供が可能であるため借入需要が少ない点や、物理的な固定資産が少ないことから固定比率が低位になる点、ストック型の収益モデルにより安定的に収益を確保しやすく手元資金や内部留保の蓄積につながる点から、安全性を図る財務指標は軒並み優良な水準にあり、安全性の高い業種といえる。
(効率性分析)
斯業種の売掛債権回転期間は、サービスの月額料金の回収サイトが法人・個人ともに1~2か月程度であるため、1.3か月の水準となっている。他方で、コンテンツ制作やシステム開発などは外部ベンダーやフリーランスに委託することが多く、受領後、一定の検収期間を経てから代金を支払うため、買掛債権回転期間は情報通信業全体よりも長期化しやすい傾向が表れている。また、事業特性上、無形のサービスの提供が中心であり、物理的な在庫が少ない点から、棚卸資産回転期間はきわめて短期間となっている。
(3) 業界動向
斯業種における、2023年度の売上構成としては、ECサイト運営業及びオークションサイト運営業(以下、EC事業)が35%を占め、その他のインターネット附随サービス事業を除くと、コンテンツ配信業やクラウドインフラ業が高い割合を占めている。
斯業種の営業種目別の売上高伸び率においては、2022年度から2023年度にかけて、EC事業とコンテンツ配信業の売上高が急伸している。EC市場が拡大している背景としては、コロナ禍にECサイトを利用し始めた層に定着したことや、高齢層のデジタルシフトが進んだこと、SNSから商品を購入するソーシャルコマースが普及したこと、実店舗を持つ企業がECサイト上での販売を強化したことが考えられる。
コンテンツ配信業の売上高が急伸した要因としては、5Gの本格普及や次世代通信技術(6G)の登場によって、モバイルネットワークの高速化や大容量通信が実現され、これまでは提供が難しかったコンテンツの配信を支える技術革新があげられる。
また、クラウドインフラ業の売上高も78%伸びており、 (出所)総務省「2024年情報通信業基本調査」
EC事業の売上拡大を背景に、EC事業の基盤となるホスティングやレンタルサーバなどの需要が高まっている様子がうかがえる。今後は、事業の継続性や拡大性を支えるセキュリティシステムに加え、課金・決済代行業などの需要拡大が見込まれる。
斯業種においては、相互に関連する事業の拡大が新たな市場を創出し、業界全体の成長を促進している一方で、新規参入が容易な事業特性上、他社との差別化を図るためには、高度な技術力を備えた人材を確保し、付加価値や信頼性の高いサービス提供が求められる。
(4) 業界動向(業界天気図)
倒産確率からみたインターネット附随サービス業の天気は、長らく薄日と曇りを繰り返しており、景況の不安定感がうかがえる。
注意報・警報においては、倒産警報や格下げ警報・注意報が散発する中、近年は格下げ注意報が再発しており、景況に不安定感がうかがえる中、業界全体としての信用力低下が強く表れている。
(5) 与信限度額の考え方
■与信限度額の設定方法
与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものである。
与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要がある。必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出する。
インターネット附随サービス業のビジネスモデルは多岐にわたるため、与信限度額の考え方にも違いがある。ここでは、BtoBビジネスとして、自社がクラウドサービスなどのユーザーとした場合の与信限度額の考え方について解説する。
●与信金額(必要な限度額)
実際の取引において、必要となる与信金額。インターネット附随サービス業に対して発生する与信取引としては、クラウドサービスなどの利用料や年会費などを事前に支払う「前渡取引」が挙げられる。継続取引における必要な与信金額は、以下のとおり算出される。
与信金額 = 前払金総額 - サービス受領分 = 前払金残高
クラウドサービスなどを継続利用する場合、利用料や会費を事前に支払うケースがあり、その間にサービス提供会社が倒産した場合、本来受けるはずだったサービスを受けられず、前払金が返還されないリスクがある。
したがって、与信金額はサービス提供会社への前払金総額から、既にサービスの提供を受けた分を差し引いた前払金残高となる。
●基本許容金額(安全な限度額)
基本許容金額は、自社の財政がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出する。一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法がある。
基本許容金額 = 自社の自己資本額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格10%、B格5%、C格3%、D格0.5%、E格0.3%、F格0%)また、クラウドサービスなどの提供会社は、利用料や会費など顧客から前受金を受領している。これは運転資金として使用せずに、サービス終了時に返金できるよう、現預金として別途管理されていることが望ましいものである。
したがって、斯業種との取引を行う際には、決算書上に計上されている前受金額と現預金を比較し、現預金が著しく少なくなっていないか、確認する必要がある。
(6) 与信管理のポイント
インターネット附随サービス業は、インターネット技術の急速な進展と新規参入障壁の低さから、競争環境が非常に厳しく、類似性の高いサービスや模倣品が短期間で発生しやすい特徴を有している。そのため、競争優位性の確保には、技術面で差別化が図れていることや、優秀な人材を確保できていることなどが重要となる。また、ネットワーク技術の変化や、検索エンジンのアルゴリズム変更、情報セキュリティに関する法規制強化など、外部環境の影響を受けやすいため、与信先が技術動向や制度変更に対応できているかも把握したい。
斯業種は、顧客数の増加と退会の防止が、売上高と利益を拡大するために最も重要なポイントである。顧客数を維持・向上するためには、サービス利用期間を延ばしつつ、新規顧客の獲得にも注力することが求められることから、「顧客数」や「平均契約継続期間」の確認も必要である。
また、サーバ機器やケーブルなど物理設備を必要とするデータセンター事業やCDN事業では、多額の初期投資が必要となり、サービス品質の維持や向上のためには継続的な設備投資が必要となるため、十分な資金を備えていることが重要となる。コンテンツやアプリケーション運営など物理的設備を要しない事業においても、自社サービスの認知度を向上させて顧客を獲得するために、マーケティングへのコスト投下が必要であり、多額の先行投資が発生することから、過度な投資によって資金繰りの圧迫につながっていないか、新規顧客獲得によって投資回収が図られているかなどについて、「資金繰り状況」や「対売上高広告費率の水準や推移」を確認すべきである。
加えて、斯業種は、労働集約型の性質を持ち、ITエンジニアや営業人員などの人件費が嵩むことから、固定費比率が高くなりやすく、売上高の減少は直ちにキャッシュフローの悪化につながる。ITエンジニアの「稼働率」や「在籍数」、「離職率」などから、人的リソースの整備状況を把握し、継続的な開発力や最新技術への適応力を備えた開発体制が構築されているかについても確認したい。
【参考資料】
経済産業省:
「商業動態統計」
中小企業庁:
「令和6年中小企業実態基本調査)」
総務省:
「2024年情報通信業基本調査」
東洋経済新報社:
「会社四季報業界地図(2025年版)」
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(一般社団法人 金融財政事情研究会)
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