与信管理の重要性

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  3. 与信管理の重要性

営業部門でよく見られる与信管理上の課題には、「与信リスクに対する理解や判断力のばらつき」「受注を優先するあまりリスク判断が後回しになる」「基準が分かりにくく、現場で運用しづらい」「与信限度額の超過や、そもそも限度額が設定されていない取引先が存在する」「回収遅延や事故発生後の見直しが十分に行われない」といった点が挙げられます。

一方、管理部門では「判断が属人的になりやすい」「営業部門と審査・管理部門の対立が生じやすい」「過度なリスク回避により営業機会を失う」「リスクを定量的に把握しきれていない」など、組織運営上の問題が起こりがちです。

こうした背景から、部門間で共通認識を持った与信管理体制の構築が、これまで以上に重要となっています。

1. 貸倒れはどの企業にとっても重大な経営リスク

取引先が倒産した場合、未回収の売上代金は「貸倒れ(焦付き)」として損失計上されます。
貸倒れは、それまで積み上げてきた利益を一気に失わせる極めてインパクトの大きいリスクです。

例えば、経常利益率10%の取引で1,000万円の貸倒れが発生した場合、その損失を補填するためには1億円の追加売上が必要となります。 このように、貸倒れは通常の営業努力で簡単に取り戻せるものではありません。

また、財務内容の悪化にとどまらず、「管理体制が不十分な企業」という評価につながり、対外的な信用を損なうリスクも伴います。

2. 回収が困難な法的倒産の増加

近年の倒産は、破産・民事再生・会社更生などの法的倒産が主流となっています。法的倒産は、私的倒産と異なり債権回収が厳しく制限され、配当率も低水準にとどまるケースがほとんどです。

「早い者勝ち」や「抜け駆け」が通用しないため、倒産発生後の対応では損失を最小限に抑えることが難しくなっています。そのため、事後対応ではなく事前の与信管理による予防の重要性が一層高まっています。

3. 「隠れ倒産」の増加

手形取引の減少や振込決済の一般化により、支払い遅延があっても「不渡り」という明確なシグナルが出にくくなっています。
その結果、財務的に実質破綻状態でありながら、統計上は倒産として表面化しない「隠れ倒産」が増加していると考えられます。
外形的な情報だけに頼らず、取引先の変化を継続的に把握・監視する体制が不可欠です。

4. 支援策終了後も続く倒産リスク

過去には、景気下支えを目的とした各種金融支援策により、多くの企業が資金繰りを維持してきました。これらの施策は、急激な経済環境の変化に対応するうえで一定の効果を果たした一方、企業の収益力や財務体質を根本的に改善するものではありません。

近年、こうした支援策の影響が薄れる中で、売上回復が十分でない企業や、債務負担を抱えた企業では、資金繰りが不安定化するケースが見られます。表面上は事業を継続しているように見えても、実態としては経営基盤が脆弱な企業も少なくありません。

そのため、取引開始時の判断に加え、取引継続中における定期的な見直しやモニタリングを行うなど、実態を踏まえた与信管理が重要となっています。

5. 景気回復局面における「黒字倒産」への警戒

足元では、物価上昇や賃上げの進展、インバウンド需要の回復などを背景に、日本経済は緩やかな持ち直しの動きが見られています。一方で、その回復は一様ではなく、業種や企業規模によってばらつきが大きいのが実情です。景気が持ち直し、売上が増加する局面では、売掛金や在庫の増加により運転資金需要が拡大します。加えて、人材確保や設備投資などの先行投資が重なることで、資金繰りに余裕のない企業では資金負担が急激に高まる可能性があります。

この結果、損益面では黒字を確保しているにもかかわらず、資金調達が追いつかずに倒産に至る、いわゆる「黒字倒産」が発生するリスクが高まります。特に、回復基調に乗って急拡大を図る取引先ほど、資金繰りの悪化が表面化しにくい点には注意が必要です。景気回復局面だからこそ、「業績が良さそう」という表面的な判断に頼るのではなく、財務状況や資金繰りの変化を継続的に把握・監視する与信管理体制の整備が、これまで以上に重要となっています。

6. 内部統制・会計基準の観点から求められる与信管理

近年、企業経営においては、売上や利益の拡大だけでなく、リスクを適切に管理できているかが重視されています。与信管理は、財務報告の信頼性を支える重要な内部統制の一要素です。

金融商品取引法では、財務報告に係る内部統制の整備・運用が求められており、取引開始から売上計上、債権管理、回収に至るまでの業務プロセスを明確にし、不正や誤謬を防止する体制構築が必要とされています。その中で、取引先の信用リスクを管理する与信管理は、内部統制の実効性を高める役割を担います。

また、金融商品会計基準においては、売掛金や受取手形などの営業債権も金融商品として位置付けられ、リスク管理方針や体制について、第三者に説明できることが求められています。形式的なルール整備にとどまらず、与信判断の基準や継続的なモニタリング体制が重要となります。

さらに、会社法に基づく内部統制の観点からも、与信管理は取引リスク全般を管理し、不祥事や信用事故を未然に防ぐ機能を果たします。上場企業に限らず、中小企業や未上場企業においても、内部統制の一環として与信管理体制を整備する意義は極めて大きいといえるでしょう。

内部統制を強化するための与信管理

7. IPO準備における与信管理体制の重要性

IPO(株式上場)を目指す企業にとって、リスク管理体制や内部統制の整備は必須条件です。その中でも、与信管理体制や反社会的勢力排除体制の整備は重要な審査項目となります。 限られたリソースの中で効率的に準備を進めるためには、外部サービスを活用し、リスクの洗い出しと体制構築を早期に行うことが有効です。

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