調査結果発表:「動産・債権譲渡登記設定企業に関する倒産分析」レポート ~倒産確率に大きな違い、業種・相手方の属性など注意すべき登記設定条件とは?~
「動産・債権譲渡登記設定企業に関する倒産分析」レポート発表
~倒産確率に大きな違い、業種・相手方の属性など注意すべき登記設定条件とは?~
法人会員向けに与信管理クラウドサービスを提供するリスクモンスター株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:藤本太一、以下リスモン)は、リスモン調べ「動産・債権譲渡登記設定企業に関する倒産分析(2024年版)」レポートを発表いたしました。
調査の背景
動産・債権譲渡登記制度は、法人が行う動産・債権の譲渡について、第三者対抗要件を備えるための制度です。企業が保有する在庫商品や機械設備、債権等を登記設定することにより、担保や資金調達手法として活用する方法に注目が集まっています。
本レポートでは、リスモンが入手した2022年1月から2024年5月の動産・債権譲渡登記データ65,264件に対して、RM企業情報データベースを照合し、動産・債権譲渡登記制度の利用実態や、倒産確率への影響を分析しました。
「債権・動産譲渡登記分析」レポートサマリー
●事業会社全体における倒産確率(0.14%)に対して、動産譲渡登記が設定されている事業会社の倒産確率(0.95%)は約7倍、債権譲渡登記が設定されている事業会社の倒産確率(6.13%)は約44倍の水準であることがわかりました。
●業種ごとの倒産確率を見ると、債権譲渡登記が設定されている事業会社では、「運輸業、郵便業」(同13.0%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(同11.0%)、「建設業」(同7.7%)、「製造業」(同7.7%)などの業種で高い倒産確率となっています。
●譲渡登記が設定された相手方(譲受人)の属性や、登記設定の回数、登記設定からの期間などの項目でも、高い倒産確率を示す条件が存在することがわかりました。
●今回の分析結果から、一定の条件において譲渡登記設定と倒産リスクの相関が認められますので、取引先の信用判断において譲渡登記設定を確認することは重要なポイントといえるでしょう。
▼本調査の詳細は、「リスモン調べ」掲載サイトよりご覧いただけます。
https://www.riskmonster.co.jp/study/research/
はじめに
■動産・債権譲渡登記とは
動産譲渡とは、譲渡人(A)が所有する在庫品や機械設備等の動産を、譲受人(B)に譲渡することです。動産譲渡を行った上で、当該動産の占有・使用の権利を、譲渡後も譲渡人(A)が保持することによって、譲渡人(A)を債務者、譲受人(B)を債権者とする取引(借入金や買掛債務)の担保として活用することができます。
債権譲渡とは、譲渡人(A)が第三者(C)に対して有する債権を譲受人(B)に譲渡することであり、譲渡人(A)と譲受人(B)が債務者と債権者の関係にあるとき、債権譲渡によって、債権者(B)が債務者(A)に代わり第三債務者(C)から債権を回収する権利を得ることができます。
動産(債権)譲渡登記制度は、法人が行う動産(債権)の譲渡について、第三者対抗要件を備えるための制度で、特に債権譲渡において、第三者に対抗するためには、原則として確定日付のある証書によって債務者に対する通知を行うか、債務者の承諾を得なければなりませんが、債権譲渡登記を行うことによって第三者に対抗することが可能となります。
■動産・債権譲渡登記件数の推移
2012年から2023年までの動産・債権譲渡登記件数の推移において、動産譲渡は、2012年から2015年の3年間で登記件数が倍増し、それ以降は7千~8千件台で概ね安定的に推移しています。それに対して、債権譲渡は、毎年3万件以上登記されており、2023年においては、動産譲渡登記の5倍以上の登記件数となっています。
■分析データ・グラフの出所
本レポートでは、リスモンが入手した2022年1月から2024年5月の動産・債権譲渡登記データ65,264件に対して、RM企業情報データベースを照合し、分析を実施しました。
分析結果
(1)譲渡人属性分析 ~業種特性による活用度の差が表れている~
動産譲渡登記は、在庫品や機械設備などの現物資産を対象としているため、銀行とその他金融業を除いた事業会社(以下、事業会社)での活用(登記件数割合96.8%)がほとんどを占めているのに対して、債権譲渡登記は、債権回収やファクタリングなどの金融取引で用いられやすいため、事業会社での活用は全体の64.4%に留まっています。(図表A)
事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記について、譲渡人の売上高規模別に企業数割合や登記件数割合を集計したところ、動産譲渡・債権譲渡ともに「1億円以上5億円未満」の企業が譲渡人となっている割合が最も高くなりました。他方、登記件数割合としては、動産譲渡では「10億円以上30億円未満」の企業における割合が最も高く、債権譲渡では「100億円以上」の企業における割合が最も高い結果となりました。
動産譲渡においては、企業数割合と登記件数割合に大きな乖離が生じていませんが、債権譲渡においては、全体の15.1%の企業数に対して、43.0%の登記件数が確認されており、債権譲渡をファイナンスサイクルに組込み、繰り返し活用する大規模企業が多い様子など、動産譲渡と債権譲渡の特性の差がうかがえる結果となっています。(図表B)
事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記における譲渡人の業種を集計したところ、動産譲渡では、「卸売業、小売業」や「電気・ガス・熱供給・水道業」「製造業」「不動産業、物品賃貸業」において活用度が高く、債権譲渡では、「卸売業、小売業」や「建設業」「製造業」において、活用度が高い結果となりました。
このうち、「卸売業、小売業」と「製造業」においては、動産譲渡と債権譲渡の両方で活用度が高くなっており、特に「卸売業、小売業」では、在庫品や売掛債権を担保として取引を行うことが、他業種に比べて常態化している様子が表れているといえます。
このほか、「電気・ガス・熱供給・水道業」における動産譲渡の活用度や、「建設業」における債権譲渡の活用度が高い点も、それぞれの業種との取引における留意点として把握しておくべきといえるでしょう。(図表C)
(2)譲渡人倒産分析 ~「運輸業、郵便業」「生活関連サービス業、娯楽業」は、活用度に反し高い倒産確率~
動産・債権譲渡登記が設定されている「譲渡人の倒産確率」を集計したところ、事業会社全体における倒産確率(0.14%)に対して、動産譲渡登記が設定されている事業会社の倒産確率(0.95%)は約7倍、債権譲渡登記が設定されている事業会社の倒産確率(6.13%)は約44倍の水準であることが判明しました。
他方、銀行およびその他金融会社(以下、金融業者)においては、金融業者全体における倒産確率(0.08%)に対して、債権譲渡登記が設定されている金融業者の倒産確率(0.84%)は約10倍の水準であることが明らかとなりました。
今回、動産譲渡登記が設定されている金融業者での倒産は確認されず、譲渡登記の設定有無が倒産に及ぼす影響はみられませんでしたが、動産譲渡および債権譲渡の登記設定情報は、事業会社や金融業者に対する与信管理において重要な情報となることがわかります。(図表D)
事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記における「譲渡人の倒産確率」について、譲渡人の売上高規模別に集計したところ、動産譲渡登記が設定されている事業会社においては、「100億円以上」(倒産確率2.6%)と「30億円以上100億円未満」(同2.0%)において2%以上の倒産確率となりました。図表Bにおいて、割合が高かった「1億円以上5億円未満」や「10億円以上30億円未満」よりも、倒産確率としては高い水準にあるため、売上高規模30億円以上の企業に対する動産譲渡登記の設定は注意を要するといえます。
他方、債権譲渡登記が設定されている事業会社においては、「1億円以上5億円未満」(同9.7%)と「5億円以上10億円未満」(同8.3%)の倒産確率が高く、売上高1億円以上においては、売上高規模が大きくなるにつれて、倒産確率が低下していく様子が表れています。(図表E)
事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記における「譲渡人の倒産確率」について、譲渡人の業種別に集計したところ、動産譲渡登記が設定されている事業会社においては、「製造業」(倒産確率3.4%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(同3.4%)、「卸売業、小売業」(同1.5%)、「農業、林業」(同1.4%)、「不動産業、物品賃貸業」(同0.2%)の5業種のみに倒産が発生していることが明らかとなりました。図表Cにおいて活用度が高かった「電気・ガス・熱供給、水道業」での倒産が発生しにくく、逆に、「生活関連サービス業、娯楽業」においては、活用度の低さに反して倒産確率が高いことが注目点として挙げられます。
他方、債権譲渡登記が設定されている事業会社においては、「運輸業、郵便業」(同13.0%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(同11.0%)、「建設業」(同7.7%)、「製造業」(同7.7%)の倒産確率が高くなっており、図表Cで活用度が高かった「卸売業、小売業」、「建設業」、「製造業」においても、5%前後の倒産確率となっています。中でも、「運輸業、郵便業」と「生活関連サービス業、娯楽業」は、活用度の低さに反して高い倒産確率となっていることから、注意を要する業種といえます。(図表F)
(3)譲受人分析 ~登記設定の相手方属性により、倒産確率は大きく変動する~
動産・債権譲渡登記が設定された事業会社(譲渡人)について、相手方となる譲受人を集計したところ、企業数では「事業会社」(企業数割合49.8%)と金融業(同46.6%)がそれぞれ半数近くを占めました。また、登記件数においては、金融業(同82.8%)が8割超を占め、そのうち銀行業(同48.5%)だけで全体の約半数を占める結果となりました。動産・債権譲渡は、資金調達目的として多用されやすいため、譲受人の多くが金融機関となっています。(図表G)
譲渡登記が設定された事業会社(譲渡人)の倒産について、相手方となる譲受人の属性を集計したところ、「貸金業、ファクタリング業、サービサー」(倒産件数割合41.3%)および「事業会社」(同37.7%)がそれぞれ約4割を占めており、倒産確率においても各10%前後の高い水準にあることが判明しました。譲受人の属性は、動産・債権譲渡に伴う倒産リスクとの相関性が表れていることから、注視すべき事項といえます。(図表H)
(4)倒産企業における動産・債権譲渡登記の設定回数 ~登記設定から2年以内の倒産が8割を占める~
動産・債権譲渡登記設定日および倒産日のデータを有する事業会社(譲渡人)513社に対して、動産・債権譲渡登記設定から倒産に至るまでの期間を分析したところ、「1~2年」(企業数割合20.9%)が最多となりましたが、登記設定から1年以内の倒産が63.4%、同じく2年以内の倒産が84.2%を占めていることから、動産・債権譲渡登記設定後、1~2年間は特に倒産発生への警戒を強める必要があるといえます。(図表I)
動産・債権譲渡登記の設定回数別に倒産企業割合を集計したところ、「1回」(企業数割合41.7%)が最多となり、2回以下で70.9%を占めました。図表Iにおいて登記設定から1~2年間での倒産リスクが高い状態にあることを踏まえると、登記設定回数においても複数回の設定よりも初回の設定時における倒産リスクが高いことが想定されます。動産・債権譲渡登記の確認時には、閉鎖謄本を取得し消滅した動産・債権譲渡登記の確認を行いつつ、現在の譲渡登記の設定履歴の有無を確認することが、信用判断においては有効と考えられます。(図表J)
(まとめ)情報収集の課題はリスクモンスターへご相談ください
今回の「動産・債権譲渡登記設定企業に関する倒産分析(2024年版)」レポートでは、譲渡人の「売上規模」「業種」、譲受人の「属性」、登記設定の「期間」「回数」などの条件によって、倒産確率に大きく変化が生じることがわかりました。企業審査の参考資料としてお役立ていただければ幸いです。
動産・債権譲渡登記の確認が、企業審査のひとつの素材として有効である一方で、日常業務の中で取引先の登記設定状況を毎月確認することは、業務負担が大きく、実際には情報収集していない企業様がほとんどです。
リスクモンスターサービスなら、譲渡登記をはじめ、取引先の信用状況変化や企業データの変更情報をキャッチし、その変化を即座に電子メールでお知らせすることができます。「いつ」「どの企業の」「何が」変わったかをすぐに確認可能です。
また、金融機関や取引先が多い企業様向けに、法人番号で指定された企業について動産・債権譲渡登記の有無を月次でお知らせするソリューションもご用意しております。
取引先の情報収集の精度向上や業務効率化の実現に、リスクモンスターサービスをご活用ください。
▼与信管理アドバイザーによるオンラインデモンストレーションのお申込みはこちら
https://www.riskmonster.co.jp/form/inquire/trial/index
リスモン情報
リスモン調べとは
リスモンが独自に調査するレポートのことです。これまでリスモンでは企業活動関連の調査として他にも「100年後も生き残ると思う日本企業調査」「環境への配慮が感じられる企業調査」や「この企業に勤める人と結婚したいアンケート調査」などを発表しており、今後も「企業活動」に関するさまざまな切り口の調査を実施することで、企業格付の更新に役立てていくとともに、情報発信を行うことで新しい調査ターゲットの創出、新サービスの開発などに取り組んでいます。
掲載サイトはこちら https://www.riskmonster.co.jp/rm-research/
リスモンの概要(東京証券取引所スタンダード市場上場 証券コード:3768)
2000年9月設立。同年12月よりインターネットを活用した与信管理業務のアウトソーシングサービス、ASPクラウドサービス事業を開始しました。以来、法人会員向けビジネスを要として、教育関連事業(定額制の社員研修サービス「サイバックスUniv.」)やビジネスポータルサイト事業(グループウェアサービス等)、BPOサービス事業、海外事業(利墨(上海)商務信息咨詢有限公司)にサービス分野を拡大し、包括的な戦略で事業を展開しております。
リスモングループ法人会員数は、2024年3月末時点で14,007(内、与信管理サービス等7,498、ビジネスポータルサイト等3,074、教育事業等2,964、その他471)となっています。
ホームページ https://www.riskmonster.co.jp/
本件に関するお問合せ先
リスクモンスター株式会社 カスタマーセンター 広報担当
〒103-0027 東京都中央区日本橋2-16-5 RMGビル
TEL: