令和の大倒産時代に備える新時代の与信管理
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リスクモンスター株式会社 データ工場
令和となって2年目、そしてオリンピックイヤーとなる2020年が幕を開けた。世間ではオリンピックの開幕に向けて熱を帯びてきている中、経済界では景気の先行きに関して、熱を帯びているとは言い難い状況となっている。
東京商工リサーチの調査によると2019年1~12月の倒産件数は8,383件となり、リーマンショックによって倒産が増加した2008年以来11年ぶりの前年比増加となった。2008年の倒産件数15,646件に比べると53.5%と半分程度の水準であり、2014年以降、6年連続で1万件を割り込んでいるという低水準に変わりはないが、10年連続で倒産件数が前年比減少を続けてきた中で、下げ止まりまたは増加の傾向がうかがえる推移となった。
また、一方で休廃業・解散件数においては、若干の増減を繰り返しつつも、2018年(46,724件)まで概ね増加基調にあった中で、2019年(43,348件)は3,376件の減少となった。
倒産件数と休廃業・解散件数の推移がそれぞれ従来の傾向から反転している点については、企業の整理において休廃業・解散から倒産にシフトしている可能性が考えられる。
これらの情報から言えることは、景気は悪化傾向にあり、今後倒産件数はさらに増加する可能性がある、ということである。現に、リスクモンスターが独自に実施した調査によれば、昨年よりも景況感が「良くなった」と回答した割合から「悪くなった」と回答した割合を差し引いて表す業況判断DI値は、+0.8ポイント(2018年12月)から-10.1ポイント(2019年12月)に大幅に低下しており、景況感の悪化を感じている企業の方が多い状況に陥っていることが表れている。
リーマンショック以降、中小企業の資金繰り支援のために設けられた中小企業金融円滑化法をはじめとする政府による支援策によって倒産件数は抑制され、東日本大震災の復興需要やアベノミクス、東京オリンピック需要も相俟って、一時は景気の高揚感もうかがえる状況となっていたが、2019年に実施された消費増税の影響、東京オリンピック後の景気の冷え込み懸念などから、景気の先行きに対する不安が生じ、実際に倒産企業の増加が景気の減速を表している状況といえる。
かかる状況下において、企業として気を付けなければならないことは、今までは倒産を回避できていた取引先の中から、遠くない将来に倒産が発生する可能性があるということであり、そのリスクに対してどのように対処していくべきか、ということである。
リーマンショック以降の倒産抑制時代に慣れてしまい、取引先に対するリスク管理を緩めてしまった会社や、従来は専門のベテラン審査マンを抱えていたが、コスト削減とともに社内から与信管理のノウハウを流出させ失ってしまった会社は少なくない。これらの会社が今後迎える恐れのある令和の大倒産時代に向けて、これから社内の与信管理強化に取り組んでいこうとしても、経験や知識によって培われてきたノウハウを取り戻すことは一朝一夕には難しい。では、どうすべきなのか。
そもそも与信管理業務は、その業務自体が利益を生むものではなく、自社の利益を確保するために発生するコストという性質が強いため、企業が収益力を強化するうえでは、いかに与信リスクを高めることなく、与信管理コストを低減し効率化していくかという点が課題となる。しかし、効率化といっても社内ルールを簡素化し、作業コストを削減しただけでは、結果として貸倒れが増加する場合もあり、与信リスクの低減として十分とはいえない。専門的な知識や豊富な経験を有するベテラン与信管理担当者がいなくても、同様に取引先の情報を収集・分析でき自社の取引リスクをコントロールできることが重要となる。
与信管理業務におけるすべてのノウハウを自社内で維持・蓄積していくには、相応の労力やコストが必要となるが、当該業務を専門的に行う業者に依頼することで、自社で行うよりも高品質かつ低コストで行うことができるものもある。
アウトソーシングの一例としては、企業調査専門の信用調査会社や、膨大な企業データを高度な分析を駆使して、高精度かつ低コストで取引差の与信評価を提供するリスクモンスターが挙げられる。与信管理業務をアウトソーシングする重視すべきポイントは、企業の情報や信用評価が迅速かつ低コストで入手でき、高度な知識や経験を有していない人でも容易に与信判断を行えることである。倒産実績に裏付けられた倒産確率に基づいて客観的かつ分かりやすい判断指標(RM格付)を提供するe-与信ナビの活用や、取引先の情報の変化を常に監視し、経営状態の変化や信用状況の変化を一早く把握することができるe-管理ファイル(モニタリング機能)の活用は、企業が昨今求められている「働き方改革」の観点からも有効な手段と考えられる。
冒頭で述べたように、オリンピック開幕に向けて熱を帯びる世間の流れとは裏腹に、経済界は大倒産時代への突入に対して警戒度が高まっている状況にある。令和という新時代を生き抜いていくために、企業は与信管理の強化に取り組まねばなるまい。