取引先リスク管理Q&A ~契約書の証拠能力を強くしたい! どうしたらいい?~
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Q.契約書の証拠能力を強くしたい! どうしたらいい?
A.
通常、売買取引などで締結する取引契約は「私文書」に当たります。「私文書」でも契約書として締結していれば、相応の証拠能力を備えていますが、債務の存在を証明するためには、裁判で「支払いを命じる確定判決」を勝ち取る等の必要性がある点では、十分な証拠能力を有しているとは言い切れません。契約書は、「確定日付の取得」や「公正証書化」により、証拠能力を強化することができます。
解説
(1)契約書の証拠能力を強化する重要性
契約は、原則として「契約書」という書面である必要はありません。たとえ口約束であったとしても契約は成立しますが、契約内容を確定し、当事者双方の誤解を生まないためにも、契約内容をあらかじめ文書によって明確化することが望ましいです。
特に訴訟において裁判所は、契約の成立及び契約内容を認定するために、契約書の存在とその内容を極めて重視します。そのため、契約書が存在することだけではなく、自社にとって不利とならない内容で契約を締結することが重要です。
契約は成立日や作成日が重要な意味を持つため、契約書には作成年月日を必ず記載しておくべきです。実務上契約書は、作成者の思惑から、その文書の作成の日付を、実際の作成日より遡らせたり、先送りする等して、一方の当事者に有利に改ざんされることもあります。このため、契約書の証拠能力を強化し、紛争の発生をあらかじめ防止する必要があります。
契約書の証拠能力を強化することによって、万が一、訴訟になった際に、有利に進めることができるだけでなく、相手方に契約内容をきちんと履行させる心理的なプレッシャーを与え、契約違反を未然に防ぐことも期待できます。
(2)契約書の証拠能力を強化するには
契約書は、確定日付を取得する、公正証書化することにより、証拠能力を強化することができます。それぞれの手続きについては、次回コラムで詳述します。
確定日付とは、文字通り、変更のできない確定した日付のことであり、その日にその文書が存在していたことを証明するものです。確定日付を取得することで、契約書の日付変更等の紛争をあらかじめ防止することができますが、あくまでその日にその文書が存在していたことを証明するものにとどまり、文書の成立や内容の真実性についてはなんら証明するものではない点に注意が必要です。
契約書を公正証書化することによっても、契約書の証拠能力を高めることができます。
公正証書は、公務員が職務上作成する公文書であり、訴訟において、文書の成立について真正である(その文書が作成名義人の意思に基づいて作成されたものである)と推定されるため、極めて証拠能力の高い文書となります。債権者は訴訟を提起しなくとも、公正証書のみで強制執行することができ、迅速な債権回収も可能となります。