既存取引先の管理方法 (1)取引先の業況をウォッチ

  1. TOP
  2. 与信管理コラム・メールマガジン
  3. 既存取引先の管理方法 (1)取引先の業況をウォッチ

既存取引先の信用調査から与信見直しが一巡し、現在は継続管理を実施されている時期と思います。

継続管理においては、取引先の業況や経営内容および自社との取引状況などをチェックし、変化や予兆を見逃さずに対処をしていく体制を構築することが与信管理のレベルをさらに引き上げることにつながります。

取引先の業況の変化をウォッチ

(1)「モノ」の面のチェック

自社との取引量の急増・急減をチェック

何を差し置いてもまず自社との取引の動きを注意深く観察しましょう。それがいちばんの情報源となります。

季節的な動き以外に仕入の急増、急減が生じている場合は要チェックです。急増は資金繰りに困り、ダンピングによる大量販売で資金を手に入れようとするための大量受注を疑う必要があります。また急減は納入先との取引が中止されたためかもしれません。

従来、取引が途絶えていた取引先からの注文についても、取引動機などを入念に確認しましょう。

② 為替・市況や法規制をチェック

経済の動きが激しい今日では、為替・市況の変動が業績に致命的な影響を与えることがあります。活況を呈している業界でも突然不況に陥ることもありますので、外国為替レート、取引先の商品や製品の価格・市況、原材料・燃料の価格・市況など市場動向については、常に敏感になりましょう。

また業界を取り巻く法規制の変化にも、常に注意を向けている必要があります。

③ 主要取引先との関係をチェック

生産基盤や受注基盤が確立し、安定していることは重要です。特に取引シェアが大きい主要仕入先、主要販売先との関係を維持することは生命線となります。取引の中止などがあると業績に大きく影響を与えますので、逐次チェックするようにしましょう。

④ 土地・設備の稼働状況をチェック

社有の土地や工場設備等の稼働状況をチェックしましょう。遊休資産があると、利益率悪化の原因となります。工場や倉庫などを見る機会を作り、止まっている機械がないか、在庫が積み上がっていないかなどをチェックしましょう。

また本社や営業所などを移転している場合は、社有資産を売却している可能性があります。不動産登記簿を取得して状況を確認するとともに、その理由についてヒアリングしましょう。


(2)「ヒト」の面のチェック

「ヒト」は企業の重要な構成要素です。ヒトの面で何か問題があると経営にも影響が出てきますし、逆に経営に問題があるときは、ヒトの面にもその兆候は現れます。

株主構成の変化や筋の悪い人間に会社が乗っ取られている兆候、経営戦略の迷走へと導きかねない人事面の混乱に関する情報があった場合は、注意すべきです。

① 代表者・役員のウワサをチェック

放漫経営など経営の実権を持つ人間の問題に関するウワサも、資金面の公私混同や派手な出費などで経営や資金繰り面へ甚大な影響が出ることが考えられますので、慎重に調べましょう。

また社長や経理部長など資金繰りを握る幹部が不在がちになっていないかチェックしましょう。資金調達に駆け回っている懸念もあります。

系列企業の業況をチェック

取引先の情報収集は、出資関係のある関係会社だけではなく、オーナー一族が経営している会社などについても行うことが重要です。親会社が自分の損失を子会社に押し付けたり、逆に子会社の債務を保証していたばかりに連鎖倒産するケースもあるからです。

③ 株主、従業員の変化をチェック

株主の変化は企業の経営方針に大きな影響を及ぼします。大株主の入れ替わりや出資比率の変化の情報を見落とさないようにフォローしましょう。

また従業員の士気や現場の雰囲気もチェックしましょう。担当者がすぐに入れ替わるなどがあった場合は、内部に問題を抱えて定着率が悪化している可能性もあります。

(3)「カネ」の面のチェック


① 取引銀行をチェック

主要取引銀行が変わった場合は要注意です。振込を行う口座に変化がないかをチェックしたり、小切手や手形を回収したら支払先銀行名をチェックしたりするようにしましょう。

特に、上位行から下位行への変更については、その理由を調べてください。上位行の融資基準を満たせなくなり、下位行へ取引を移行している恐れがあります。

② 焦げ付きの発生有無をチェック

販売先からの債権回収が滞っていると、資金繰りに大きな影響を及ぼします。取引先の販売先に関する情報にも目を配るようにしましょう。

(4)e-管理ファイルの「モニタリング機能」の活用

取引先の情報収集は、営業現場で行うことを第一と考えるべきですし、それが一番早いのは間違いありませんが、100%万全ではありません。

そこで気になる取引先をe-管理ファイルに登録し、「モニタリング機能」を活用することで情報取得の漏れを防ぐことができます。RM格付や企業情報に変化があった場合に即座にメールを受け取ることができます。さらに格付変化については電話でその理由を聞くことができます。


page top