取引先の与信限度の見直し方法 (3)与信管理ルールの策定法

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管理強化と効率化を実現する線引き

前章で解説した(1)与信限度の更新手順(2)与信方針見直しの実際 の各プロセスについて全ての取引先について適用することは、意思決定の迅速化が求められる現在のビジネス現場においては現実的ではありません。そこで管理強化と効率化を同時に実現する取引先の線引きを行います。

① 信用力のランクに応じた線引き(A)

まず信用力のランクごとに安全な与信限度の目安を定め、それを超過するか否かで優先順位を定め、管理方針を変える。その線引きは、財務体力(自己資本を毀損するリスク)と取引シェア(撤退不可能となるリスク)を勘案し、以下のように信用ランクごとに目安のラインを設定することとなります。

■目安となるラインの設定例

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② 少額取引の線引き(B)

取引額が小さく、たとえ焦げ付いたとしても自社の自己資本に与える影響が僅少で、管理コストが利益を上回ってしまうと考えられるラインで設定します。

③ 大口取引の線引き(C)

与信額が一定額を超える大口取引先は営業戦略上特別な意味を持つことが多いことから、与信の意思決定に政策的な判断が必要となります。

領域ごとの管理方法

上記の線引きに応じて、取引先を分類し、リスクに応じて決裁者、管理方法を変更する。これによってリスクが高い領域は管理強化が、リスクが小さい領域は業務の効率化が実現します。

① 少額与信領域(与信額≦B)

与信リスクがきわめて小さく、管理するよりも完全に営業現場に判断を任せた方がスムーズに案件が進められると考えられる領域です。管理する方がコスト倒れになる領域です。

② 重点営業領域(B<与信限度≦AおよびC)

与信額は少額と言えるほど小さくありませんが、高格付で信用力が高く、財務体力の範囲内であり、比較的リスクは低く、ある程度営業部門に案件管理を任せられる領域です。与信額を増やす余地があり、積極的に営業を強化すべきと言えます。

③ 集中管理領域(BおよびA<与信限度≦C)

信用力が低くリスクが高いゆえに、管理部門にてフォローアップする領域である。営業部門の専決とはせず、管理部門にて審議した後で決裁するようにし、管理レベルを一段階上げることが求められます。

④ 優良政策案件管理領域(C<与信限度≦A)

信用力が高い大口取引先、いわゆる上得意先が該当する領域である。上得意先だが、信用力の低下に備える必要があるゆえにフォローアップにある程度のコストを負担して管理を行っていくべきです。

⑤ 高リスク政策案件管理領域(AおよびC<与信限度)

リスクが非常に高いゆえに、与信管理に割くことができる経営資源を最大限に振り向け、集中的に管理すべき領域である。決裁者を一段階引き上げたり、更新頻度を増やすなどで、見直しにコストをかける一方、具体的なリスク軽減策を立てます。

■管理領域別の与信限度設定における分掌の例

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■管理領域別の与信限度申請時の添付書類の例

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