取引先の与信限度の見直し方法 (2)与信方針見直しの実際

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与信リスクの調整方法

決裁プロセスの中でリスクが高いと判断されたものについては、リスクを減額するための手段として以下のような対策があります。

情報取得の強化

取引先の状況把握を進めることでリスクをミニマイズします。決算書(場合によっては法人税申告書、月次決算書、資金繰り表など)の提出、取引先への訪問・経営者インタビューの実施およびその頻度の強化、調査会社からの信用調書の取得などが挙げられます。

② 基本契約書の帰結

信用力が低い先などは、支払遅延などの問題が発生した場合にすぐに対処が取れるよう、債権回収するのに有利な特約条項を盛り込んだ契約を締結します。交渉が難航しそうな場合には注文書などの個別契約に特約条項を記載する。特約条項としては、期限の利益喪失、契約解除、合意管轄、遅延損害金請求、所有権留保、相殺予約、追加担保請求などがあります。

③ 保証サービスの利用

保証会社に保証料を支払うことで、取引先の倒産または支払遅延が発生した場合に回収不能となった債権額について保証会社に請求することができる。実質的な利益率は下がりますが、具体的なリスクヘッジについて交渉ができない取引先に対しては経営内容が把握できるまでサービスを利用することが有効です。

④担保の取得

資産背景のある代表者やその血縁者、またはグループ会社から連帯保証を取得したり、現金・不動産・有価証券・在庫・売掛金・機械設備等を契約により担保取得したりすることで取引先有事の際に取得している担保から回収が進められるようにします。

⑤その他担保としての効力ある原資の創出

取引先から商品を購入する(仕入れる)ことで買掛金を保有し、万一の際の相殺原資を作る。または廻り(裏書譲渡)手形で回収するなども実施的な回収リスクを下げることにつながります。

⑥決済条件の調整

回収サイトを短縮する、または商品引渡し前に代金の一部または全額を現金で受け取ることにより、取引先に対する売掛債権を圧縮することができます。

⑦商流の変更による調整

取引先に対して直接与信が発生しないよう、商社・代理店経由で販売する、またはエンドユーザーに直接販売して手数料を支払う形にするなどで取引ルート(商流)を変更することにより、リスクを回避します。

⑧取引金額の減額

販売金額を減額する、または取引を中止することにより、売掛債権を減額します。当然得られる利益が減少するため、最終的な手段として考えるべきです。

これらを進める上では、法的に許容されるか、他の取引先など営業基盤への影響、道義的・社会通念的な評価などに十分留意します。また交渉する上ではこれらを受け入れれば取引してもらえると取引先に思われないようにすることが肝要です。

リスク調整の上での管理部門の役割

実際のリスク調整に当たっては、上記①~⑧の組合せによって図られることとなりますが、可能な限り利益を確保しながら、リスクを軽減できるよう営業部門に提案しながら進められるかで管理部門の能力の真価が問われることとなります。

牽制機能だけに傾斜するのではなく、リスクリターンのバランスを勘案しながら着地点を見出すことで、よきサービス部門となることをめざします。それにより、営業部門の協力も引き出され、結果的によき牽制機能も発揮することを忘れてはなりません。

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