危ない中国企業の見分け方 第11回 中国における法的倒産手続

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はじめに

近時、中国政府は、赤字を垂れ流す国有企業、いわゆるゾンビ企業を淘汰する為、法的倒産手続に関する規定・制度を整備しています。2007年に企業破産法が制定されてからも、中国の人民法院は、企業が法的倒産手続を採った場合に、当該地域に与える影響を危惧して申立を受理しなかったり、破産管財業務に通じた弁護士が少ない等の理由で手続を遅らせたりしていた為、法的倒産手続の案件がそれほど多くありませんでした。

 しかし、昨年、最高人民法院は、中級人民法院に清算・破産法廷を設置することについての業務案を公布し、これを受けて多くの人民法院が法的倒産手続を専門に取扱う専門部を設置しました。このため、最高人民法院が発表した情報によれば、2016年には合計5,665件(2015年比53.8%増加)の破産案件を受理し、3,602件(2015年比60.6%増加)の案件審理を終了したということであり、いずれも増加しています。したがって、今後も法的倒産手続が増加していくと見込まれますので、ここで中国における法的倒産手続についてご紹介させていただきたいと思います。

中国における法的倒産手続の概要

通常の解散・清算はいわゆる倒産ではない為、ここでは簡単に触れるにとどめますが、資産の方が債務よりも多い場合に採ることができます。他方、法的倒産手続は債務超過の場合に採ることができます。
法的倒産手続は企業破産法に規定されており、大きく分けて破産、重整及び和解の3種類があります。このうち破産はイメージしやすいと思いますが、重整は、債務者が継続的に事業を運営しながら、債権者らの同意を得た計画に基づき弁済をする手続であり、日本の会社更生に近い手続です。和解は人民法院の下で債務者と債権者が、債務の弁済に関して和解を行う手続です。

(1)破産について
 破産は、債務者が債務超過の場合に、当該債務者の有する資産をもって、全債権者に対して債権額の割合に応じて按分弁済を行う手続です。破産手続を採る場合、債務者は人民法院に対して破産申立を行います。人民法院は破産申立を受理すると同時に、管財人を指定し、申立受理日から25日以内に知れたる債権者に通知し公告を行います。その後、人民法院の定める一定期間内(30日以上3ヶ月以内)に債権者らから債権届出をしてもらい、管財人は受領した債権届出に関して審査を行い債権表を作成します。当該債権表は、債権届出期間満了日から15日以内に開催される第1回目の債権者集会において債権者らの審査を受けることになります。その後、人民法院は、債権者集会における決議に基づき、債務者が破産することを宣告します。破産宣告がなされた後、管財人は財産の分配を実施し、人民法院に破産手続終結を申請します。人民法院が破産手続の終結を裁定し公告を行った後、破産手続が終了となります。そして、管財人は、破産手続終了日から10日以内に、登記機関において企業の登記抹消手続きを行うことになります。

(2)重整について
 重整は、破産原因を有しまたは破産の可能性があるものの、再生の可能性がある債務者に対し、債権者の決議した重整計画案を人民法院が認可した場合に、当該計画を履行することによって債務を弁済する制度です。破産と異なり、債務者が事業を継続する点に特徴があります。
 人民法院は、債務者からの重整申立を受け、重整手続を開始した場合、債務者または管財人は、重整開始日から6ヶ月以内に、人民法院及び債権者集会に重整計画案を提出しなければなりません。重整計画案が、債権者会議の同意を得た場合、人民法院は当該計画案を認可することにより、重整手続が終結となり、重整計画の履行に入ることになります。一方、重整計画案が債権者会議において同意を得られない場合または人民法院に認可されない場合、人民法院は重整を終結し、債務者の破産を宣告します。

(3)和解について
 和解は、債務者が、人民法院に対し、債務に関する和解協議書草案を提出し、債権者集会及び人民法院による認可を経て、これを履行することによって、債権者に弁済をする制度です。和解協議書案が認可された場合、管財人は財産及び運営業務を債務者に移管し、人民法院に対して、職務の実行に関する報告書を提出することになります。和解協議書草案が債権者会議で承認されない場合あるいは人民法院に認可されない場合、人民法院は和解を終結し、債務者の破産を宣告します。

監修:大江橋法律事務所上海事務所  首席代表 松本亮弁護士

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