危ない中国企業の見分け方 第10回 中国の信用調査会社・調査方法
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中国の信用調査会社
中国の信用調査会社としては、2016年12月時点で、北京38社、上海34社、広東8社のほか、各省に数社ずつ、計134社が存在しています。
企業情報サイト「信用視界」の報告によると、2015年末に北京に存在していた信用調査会社40社における信用調査業務の売上高は計2.2億元(約37億円)であり、一番規模が大きい企業でも、年商約3,500万元(約6億円)、約半分の企業が年商1万元から500万元でした。
日本の大手調査会社である帝国データバンクと東京商工リサーチの売上高合計680億円と比較すると、日本の数倍の経済規模を有する中国において信用調査市場がいかに未発展な市場であるかが分かります。さらに、利益額でみると、上記40社の合計が▲6,570万元の赤字であり、収益性も悪い業界であるといえます。
中国における有力な調査会社としては、上海では「上海傑勝商務諮詢(JSBIZ)」や「上海華予信企業信用征信(CTC)」が業歴15年近くあり実績豊富な調査会社といえます。その他、香港資本の「上海中商商業征信(CIB)」、「中誠信征信」、「広州市金科企業管理諮詢」なども有力です。
以前は、世界大手の「Dun & Bradstreet(鄧百氏)」や米国調査会社Experian社が買収した「新華信国際信息諮詢(シノトラスト)」が大手信用調査会社として有力でした。しかし、資本背景の影響か、近年は中国政府から情報を取得することが困難になり、他の調査会社を利用する企業が増加しています。そのため、現状の中国には、日本の帝国データバンク等のような大手の調査会社は存在しない状態にあります。
中国調査会社の調査方法
信用調査報告書は、1社当たり1,000元~2,000元程度の費用で入手できます。日本の大手信用調査会社は、全日本企業の半数以上を毎年調査していますが、中国では、前述の40社全ての調査数を合計しても年間33万社、つまり、全中国企業の1~2%程度しか調査がされていないため、調査はほぼ毎回新規調査となり、1~2週間程度の時間を要することとなります。
各調査会社の調査方法は概ね共通しており、①政府からの財務情報等の入手、②電話調査の2つの手段で行われています。①前者では、企業が工商局や税務局、統計局等に対して提出する財務情報を入手しています。②後者では、例えば、製品を購入する顧客の振りをして、相手先から販売先や仕入先、競合先の情報を聞き出すなど、調査会社はその身分を隠しながら調査を行っているようです。
中国信用調査会社を選ぶポイント
調査会社を選ぶ際の注意点を4つ紹介いたします。
①中国人民銀行の備案(証明書)を保有
中国における信用調査会社は、事業を行うに当たり、2013年に施行された「信用調査業管理条例(征信業管理条例)」に基く、中国人民銀行による備案(証明書)が必要です。調査会社を名乗る事業者の中には、証明書が無く、無許可で調査業務を実施している企業も存在しますので、依頼先の調査会社が下図のような備案を有しているか確認するようにしましょう。
②業歴が長く、実績が豊富
中国では、毎年多くの信用調査会社が新設されていますが、新設企業は、報告書内容の品質に問題があり、納期も守られない傾向が見られます。後発調査会社の傾向として、低価格戦略をとる例が多くみられますが、ほとんどが長くは続きません。実績を重視した調査会社選びが肝要だといえます。
③財務情報の取得元が明確
税務局データは、利益以外の正確性は高いものの、利益が過少計上されやすい傾向があり、統計局データは、比較的入手しやすい反面、数字の正確性がやや低い傾向にあるなど、財務情報の質は、取得元により特徴がありますので、財務情報の取得元が信用調書に明記されている調査会社を選ぶのが良いでしょう。
④評価が分かりやすい
信用調書において最も重要な事は、調査対象企業が信用できる会社か否かが判断しやすいということです。情報量が多くても企業の良し悪しが分かりにくいのでは意味がありません。当社は、複数の信頼できる調査会社から情報を入手し、決算粉飾の有無など1社1社専属のアナリスト分析し、明瞭で分かりやすい評価を付与しています。
<中国人民銀行による備案>