危ない中国企業の見分け方 第9回 与信取引時に役立つ「銀行引受為替手形」

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中国において販売先と与信取引(掛取引)をする際に、販売先の取引銀行が支払いを保証する「銀行引受為替手形」は与信リスクを低下させる決済手段として非常に有効です。貿易におけるL/Cと同じようなものだと捉えると分かり易いでしょう。今回は、「銀行引受為替手形」を含めた中国の手形について紹介します。

中国の手形種類

中国の手形法である「中国人民共和国票据法」における手形としては、「小切手(支票)」、「銀行振出小切手(本票)」、「為替手形(匯票)」の3種類が規定されています。
「小切手」は、中国では手形の一種とみなされており、信頼性の高い短期的な決済手段として、個人・法人ともに日常的に利用されています。2014年度には、242兆元(3,872兆円)が流通しました。

「銀行振出小切手」は、「振出人が銀行の約束手形」と翻訳される場合もありますが、支払期間が短く、提示後は速やかに支払う必要があるため、その性質は小切手に近いと言えます。

「為替手形」には、「銀行為替手形(銀行匯票)」、「商業手形(商業匯票)」の2種類が有ります。

「銀行為替手形」は、手形発行依頼人である企業が銀行に対して事前に資金を交付した上で、銀行が発行する、安全性の高い決済手段であり、主に遠隔地間取引において使用されております。ただし、先に資金を交付する必要があるため、買手が掛取引を希望している場合には有効ではありません。

日本と異なる「商業手形」

日本で「商業手形」と言うと、振出人が債権者に支払うことを約束した「約束手形」と、振出人が第三者に対して支払を委託する「為替手形」を表しますが、中国においては、日本の「為替手形」に似た「商業引受為替手形」と銀行が引受人となる「銀行引受為替手形」の2つが長期的な決済手段として使用されており、日本の「約束手形」のような概念はありません。
日本では、振出人が期日通りに支払を行えない「手形不渡り」が6ヵ月以内に2回発生すると銀行取引停止処分となり、事実上倒産状態となるため、手形は支払義務力が強いものとして認識されています。しかし、中国では、日本のような厳しい手形制度がなく、不渡りを起こしても、罰金(1日遅延につき額面の0.07%)の賦課がある程度であるため、「商業引受為替手形」は、支払義務力が弱いものとみなされています。

「商業引受為替手形」を受け取った際には、引受人である企業の信用力を審査する必要があるため、商習慣においてあまり普及しておらず、主に同一企業グループ内の決済用途で使われることが多いようです。

販売先から「商業引受為替手形」での決済を提案された場合には、注意しなければなりません。

銀行が保証する「銀行引受為替手形」

「銀行引受為替手形」は、振出人である企業が取引銀行に対して、額面の0.05%の手数料を支払い、銀行は振出人の現預金を確保、審査した後に、引受人になる制度です。振出人の口座残高が不足している場合でも、銀行が支払いを保証するため、比較的安全な決済手段と言えます。
「銀行引受為替手形」は、売手にとって信用供与機能を有していることで有利に働くだけでなく、買手にとっても、支払い期間も長く設定することができるというメリットがあります。買手が掛取引を希望している場合には、条件として「銀行引受為替手形」を求めることは非常に有効であり、実際に、「銀行引受為替手形」は、小切手の次に多い決済手段として「商業引受為替手形」の約25倍近く流通しています。

入手した手形を銀行に持ち込めば、割引(貼現)を行い、期日前に資金化することもできます。

ただし、手形の引受人である引受銀行が国有四大銀行(工商銀行、建設銀行、農業銀行、中国銀行)以外の場合には、銀行の信用力状況によって、割引を拒否される、または割引手数料が高くなるなどといったことがあり得ますので注意が必要です。日系企業の中には、国有四大銀行以外の手形は受取らないという社内ルールを設定している企業も多いようです。

手形の記載方法や署名捺印など、形式的な要件に不備が発生した場合には、引受銀行が支払いを拒絶することがありますので、慎重に確認する必要があります。

中国における手形の分類

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※流通額は中国人民銀行「中国支付体系発展報告2014」より

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