危ない中国企業の見分け方 第8回 中国企業の財務分析
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過去のコラム「中国企業の定量分析・財務分析」では、日本と見方が異なる「自己資本比率」や「借入依存度」、粉飾を見抜くための「回転期間分析」をご紹介しました。今回は、「売上高営業利益率」と「流動比率」です。また、財務分析に役立つ統計局開示情報についてもご紹介します。
まず、統計局が開示する中国企業財務情報とリスクモンスターが保有する日本企業財務情報に基づいて、日中比較したところ、「流動比率」と「売上高営業利益率」で大きく差があることが分かりました。
流動比率 | 売上高営業利益率 | |||
---|---|---|---|---|
日本 | 中国 | 日本 | 中国 | |
製造業(全体) | 198.80% | 103.90% | 4.60% | 6.10% |
食料品製造業 | 156.80% | 116.00% | 3.00% | 9.50% |
化学製品製造業 | 234.10% | 88.60% | 8.10% | 4.80% |
金属製品製造業 | 204.90% | 121.30% | 4.40% | 6.40% |
電気機器製造業 | 200.40% | 127.30% | 4.10% | 6.60% |
※集計対象:従業員300人以上かつ売上高2,000万元(3億円円以上)の大中規模製造業、中国は2014年12月期の開示情報
流動比率
流動比率は、企業の短期的な支払能力の有無を表す指標であり、1年以内に現金化できる資産である流動資産と、1年以内に支払わなくてはならない流動負債とのバランスを示します。流動比率は、短期的に支払が生じる負債に対して速やかに現金化できる資産がどれだけ有しているかを示していることから、少なくとも100%を超えていることが必要と考えられます。
日中比較した場合、図表Aの通り、一定規模以上の企業においては、日本企業が中国企業より流動比率が高く、200%前後あることが分かります。これは、集計対象企業規模においては、日本企業が長年の業歴を有している企業が多く、過去から利益を蓄積していることによるものと推察しています。
なお、中国企業においては、債権の支払期間を長期化させる習慣がありますが、流動比率が100%を大きく下回っていれば、債務に見合った原資がなく、支払不能に陥る可能性があるということになりますので、注意が必要です。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、本業での生産活動及び販売活動で、どれだけの利益を創出しているかを示す指標です。企業の収益力を分析する際に、売上高利益率を過去推移や同業他社との比較を行うことは非常に有効です。
売上高営業利益率は、中国企業が活発な経済環境において、日本企業よりも高い利益率(製造業平均6.1%)を確保しています。リスクモンスターの調べによると、日本企業では、業種にもよりますが、売上高営業利益率が5%未満になると倒産確率が高まるのですが、中国企業の場合はもう少し高めの水準から倒産確率が高まることが想定されます。
国家統計局開示の業界財務データ
統計局では、業種毎の財務情報が毎年公開されています。サンプル企業の財務情報の総計が勘定科目毎に開示されおり、賃借対照表では流動資産合計や売掛金、棚卸資産、固定資産、流動負債合計、買掛金、所有者持分総計などが、損益計算書では、売上高や売上原価、販管費、営業利益などが、それぞれ掲載されていますので、各業種の平均財務指標を算出することができます。
対象は、第2次産業の製造業に限定されますが、機械、金属、化学、繊維、食品、石油ガス等、約40の業種に細分化されています。
また、「私営企業」、「国有企業」、「外資系企業」といった資本系列別や「規模以上(売上高2,000万元以上)」、「大中規模(売上高2,000万元以上かつ300名以上)」といった規模別でも分類されております。
自社や取引先の業界平均値を確認し、取引先の財務分析にご活用ください。