危ない中国企業の見分け方 第2回 中国企業の定性分析①「ヒト」の情報

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企業の情報は、数値で読み取れる情報(定量情報)と、単純に数値に表すことのできない情報(定性情報)に区分されます。前者に対する分析を定量分析と呼び、後者を定性分析と呼びます。

 定性分析はなぜ必要なのでしょうか。それは、例えば「売上高(営業収入)が下がった」という定量情報を入手した場合に、その原因として入手した定性情報が、それぞれ「工場の稼働効率が悪化した」、「輸出において元高(円安)が影響した」、「価格競争により単価が低下した」という場合では、要因が外的・内的のどちらか、回復の見込みがあるのかなどの観点で状況が異なり、減収(定量情報)に対する評価にも変化が生じるからです。

 また、主たる定量情報となる決算書は1年に1度しか作成されず、入手時期も12月の決算期から数か月後となるため、入手時点では既に過去の情報といえます。変化の激しい中国においては数か月で状況が変化していることも少なくないため、日頃から最新の定性情報を入手し、情報を補完することが、取引に対して正確な判断をするうえで重要となります。

 定性情報は、種類が多く、それぞれに重要度も異なるため、情報の種類を企業の経営資源と同様に、「ヒト」「モノ」「カネ」に区分することで、整理しやすくなります。

 今回から2回にわたって、項目ごとに中国企業の定性情報の分析方法について解説していきます。

基本情報(住所、事業内容)

ウェブサイト等に掲載されている情報を基に、「住所は登記上の住所と一致しているか」、「事業内容は把握している内容と合致しているか」などを確認します。異なる場合は、その理由を確認してください。住所や事業内容が頻繁に変わっている企業は、詐欺業者である可能性も有ります。

また、事業所(办事处)は、一般的に本社の業務連絡活動だけに業務が限られるため、取引窓口が本社や支社(分公司)ではなく、事業所の場合には、当該取引の適正性を検討する必要があります。

株主・資本関係会社

株主構成や出資比率から、企業の経営事情を推察することができます。

株主は、まず「個人か法人か」を確認しましょう。日系企業などの外資系企業が株主となっている場合は、信用面ではプラス材料と考えることができます。

大株主に変更が生じた場合は、経営再建のために新たな株主を経営者として迎えた可能性もあるため、目的や支援体制を確認する必要があります。

グループ企業が存在する場合は、それらの企業を調査し、業績悪化企業が無いか確認すべきです。

株主情報は、前回述べた工商局企業信用情報公示システムからも確認できます。

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<中国企業信用情報公示システムイメージ>

経営者

中国企業では、経営を執行する総経理に対し、最高権限者となる董事長や株主がどの程度の影響度を有するかを把握することが、取引をスムーズに行うためのポイントといえます。

また、経営者の業界知識や経営経験が乏しい場合は、不意に経営危機に見舞われるおそれも否めません。信用調書などで、学歴やこれまでのキャリアを確認しましょう。

従業員

従業員によるストライキが頻繁に行われるような企業は、従業員と経営者の関係性が悪く、経営状態も芳しくないことが多く見受けられます。 また、「従業員の定着率が悪い」、「短期間で幹部社員等が多数退職した」といった情報は、取引先の事業運営が不安定である可能性を示す重要な情報です。

定性情報については、日頃の観察・情報交換の意識が情報入手の重要な要素となります。高いアンテナを持ち続けることを習慣づけましょう。

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