どこよりも早い「2024年倒産動向レポート」

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1.はじめに

 リスクモンスターにて独自に収集した倒産情報に基づき、「どこよりも早い※」2024年の倒産速報をお届けするために、本レポートを執筆したものである。速報性を重視するため、2024年の倒産実績は、2023年12月から2024年11月までに発生した倒産に基づいて集計しており、過年度においても同一期間にて倒産件数を集計している。※当社調べ(2024年12月16日現在)

 

2.集計結果

【1】 年別倒産件数推移

2024年の国内法人の倒産件数は、7,538件となり、前年(7,055件)から6.8%の増加となった。コロナ禍のセーフティネット政策によって、2021年に倒産件数は大幅に減少したが、2022年以降は増加を続けている。2023年には、前年比30%近い増加となりコロナ禍前の水準を超え、2024年においては、直近9年間で最多件数に至っている。(図表A)

【2】 業種別

業種別では、18業種中11業種で前年を上回った。「その他」を除くと、「卸売業、小売業」(1,483件 前年比+49件)、「建設業」(1,347件 同+120件)、「製造業」(1,060件 同+76件)において、倒産件数の多さや増加が目立っている。その要因としては、販売や受注の不振が挙げられるほか、建設業においては人手不足や資材価格の高騰が影響しており、製造業においては円安による原材料価格の高騰やエネルギーコストの増加が影響しているものと考えられる。
他方で、「宿泊業、飲食サービス業」(512件 同▲45件)は、倒産件数が前年から最も減少しており、コロナ禍の終息によって、国内の消費活動やインバウンド需要が回復したことを背景に、業況が改善したものとみられる。(図表B)

【3】 地域別

地域別の倒産件数としては、9地域すべてにおいて前年を上回った。中でも、「中国」(413件 前年比+86件、126.3%)、「東北」(513件 同+85件、119.9%)、「九州」(728件 同+85件、113.2%)においては、前年よりも倒産件数が50件以上増加、かつ前年比10%以上増加しており、特に倒産が目立つ地域となっている。
都道府県別では、38の都道府県において倒産件数が前年を上回っており、特に、「東京都」(1,561件 前年比+91件、106.2%)、「大阪府」(714件 同+71件、111.0%)、「福岡県」(358件 同+52件、117.0%)、「愛知県」(433件 同+50件、113.1%)、「広島県」(174件 同+41件、130.8%)などの大都市における倒産増加が目立っている。(図表C)

【4】 倒産形態別

倒産形態別にみると、「法的倒産」がほとんどを占めており、手続きの種類としては、「破産」(7,051件)が全体の93.5%を占めている。「特別清算」(273件)を含めると「清算型」倒産手続きが全体の97%を超えており、「民事再生」や「会社更生」の「再建型」倒産手続きは、わずか1%程度に留まっている。(図表D)

【5】 売上高規模別

売上高規模別の倒産件数としては、「10億円未満」(合計3,087件 構成比41.0%)の中小・零細企業が4割以上を占め、うち半数以上は「1億円未満」の小規模企業となっている。一方で、「100億円以上」の倒産はほとんど発生していない。
売上高が不明瞭な企業の倒産が6割程度を占めている点においては、情報開示姿勢の観点から中小・零細企業である可能性が高いと想定すれば、「10億円未満」の倒産件数と合わせて、98%近い倒産が中小・零細企業から発生しているものと考えられる。(図表E)

【6】 業歴別

業歴別の倒産件数としては、設立から10年単位での倒産件数を比較すると「0年~9年」(合計2,077件 構成比27.6%)の層が最も多く、3割近くを占めている。「10年~19年」(構成比22.6%)、「30年~49年」(同20.3%)においても20%台にあり、倒産割合が高い。「0年~9年」(合計2,077件 構成比27.6%)においては、「0~4年」(倒産件数570件、構成比7.6%)よりも「5年~9年」(倒産件数1,507件、構成比20.0%)の方が3倍近く多いことから、設立から設立後10年に向かう中で、淘汰される企業が増加していく様子が表れている。
また、「50年以上」(構成比10.7%)の老舗企業においては、10年単位での比較では最も倒産割合が低く、経営が安定している企業が多い様子がうかがえる。(図表F)

【7】 格付別

リスクモンスターが提供する信用格付別の倒産件数としては、「低位格付」(倒産件数3,358件 構成比93.0%)において、90%超を占めている。倒産確率においては、低位格付先(倒産確率0.28%)は上位格付先(同0.01%)の30倍近く高く、低位格付先は倒産リスクに注意が必要であることがわかる。(図表G)

【8】 信用不安情報別

信用不安情報の有無別では、倒産企業の約2割は「1年以内」(合計1,424件 構成比18.9%)に信用不安情報を入手しており、7割以上の企業において、過去に何らかの信用不安情報が出回っていることがわかる。(図表H)
倒産企業のうち、1年以内に信用不安情報を入手した企業において、その内容と入手から倒産に至る期間を集計したところ、3割近い企業は信用不安情報の入手から「1か月以内」(合計473件 構成比29.3%)に倒産する結果となった。特に、資金ショートが表面化している「不渡り」や、連鎖倒産のリスクが生じる「貸倒れ」、債権譲渡登記や差押え登記等の「登記関連」の不安情報については、情報の入手から倒産に至る期間が短いため、注意が必要といえる。(図表I)

 

3.総評

近年、倒産の増勢がみられる中、2024年はさらに前年を上回る倒産件数で推移した。2024年の倒産増加要因としては、コロナ禍の中小企業支援策である「ゼロゼロ融資」(2020年3月に開始し、民間金融機関では2021年3月に受付終了、政府系金融機関は2022年9月に受付終了)において、民間金融機関への返済開始が2023年7月から2024年4月に集中したことがあげられる。2024年6月まで借換保証などの政府によるコロナ関連の資金繰り支援が延長されたものの、7月以降はコロナ禍前の支援水準に戻っており、返済に窮して資金繰りに行き詰る企業が表面化したと考えられる。
本レポートからは、財務体力が乏しくなりやすい中小・零細企業や、設立後10年に向かっていく途上の企業などにおいて倒産が少なからず発生している点や、倒産前に信用不安情報が出回りやすい点などが2024年の倒産分析の結果として読み取ることができた。企業の審査担当者においては、これらのポイントを自社の企業審査に活かし、与信管理の改善につなげていただきたい。

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