調査結果発表:第1回「震災対策に関する意識」調査(リスモン調べ)

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調査結果発表:第1回「震災対策に関する意識」調査(リスモン調べ)

リスクモンスター株式会社
データ工場

 2024年8月、宮崎県で発生した震度6弱の地震を起因とし、南海トラフ巨大地震が発生する可能性が相対的に高まったことから、政府は2024年8月8日に「南海トラフ地震臨時情報」を発表した。近年、相次ぐ大地震と、高まる南海トラフ地震の脅威に向けて、各企業がどのように対策しているのかを調査したのが本レポートである。なお、今回リスクモンスターが独自に行った「震災対策に関する意識調査」に対しては107社から回答が得られた。

 自然災害に対する自社の防災や経営上の対応状況については、約8割が「対策済」と回答しており、取り組み内容としては、「事業継続計画(BCP)の策定・訓練」や「非常食や飲料水の確保」、「防災用マニュアルの整備」など、自社の事業継続や従業員の安全面を重視している様子がわかった。
かかる状況下において、大地震の発生時には、「仕入活動」や「社内システム等」に対して影響が生じる見方が強いものの、災害対策が「策定済」の企業においては、その対策によって事業継続の要となる「販売活動」や「社内システム等」に対してはリスク低減が図られている様子がうかがえる。
それでも、大地震によって事業に支障が生じる期間としては、約8割が「1日以上」の「完全停止」を想定し、約半数が完全復旧までに「1週間超」を見込んでいるなど、大地震が事業に与える影響の大きさと、それに対応する難しさが本アンケートに表れた結果といえよう。

 地震大国の日本においては、これまで各地で大地震が発生し、その度に経済は大きな打撃を受けてきた。それ故に、わが国では地震災害の発生やその教訓を元に建物の耐震基準や防災計画が強化されており、国民や企業における地震の防災意識は、他国に比べ非常に高い状態にある。
今回のアンケート調査においても、約8割の企業が震災対策を行っているにも関わらず、有事の際には1週間以上にわたる事業への影響が見込まれているように、天災は、人間の力で回避することは難しく、その影響は多大であることを我々は理解している。しかし、だからこそ、自社事業や社員を守るためには、考えられるリスクに対して、できることから取り組み、一つずつリスク低減を図っていくことが肝要なのだろう。

 

※本調査レポートは、2024年9月19日~27日に、リスクモンスター株式会社の会員企業に向けて、メールによるアンケートを実施し、有効回答107件について集計、分析したものである。

 

[Q1] 自然災害に対する対応状況

企業に対し、自然災害に対する自社の防災や経営上の対応状況について聞いたところ、「対策・計画を策定済(策定済)」が78.5%を占め、「対策・計画を検討中(検討中)」は14.0%、「何も検討もしていない(未検討)」は7.5%となり、9割以上の企業が自然災害に対して何らかの行動をとっていることが分かった。(図表A)

対応状況を上場区分別にみると、「上場企業」においては、すべての企業において策定済となっているのに対して、「非上場企業」においては、4社に1社は対応策が整っていない状況となっており、さらに売上高規模別にみると、「10億円以上100億円未満」の企業においては約3割、「10億円未満」の企業においては半数近くが、対応が未策定状態にあることから、企業規模が小さい企業における自然災害への対策の遅れが表れた結果となった。(図表B)

 

 

[Q2] 自然災害に対する具体的な対応状況は?

Q1で「対策・計画を策定済」と回答した企業に対して、自然災害に対する自社の防災や経営上の具体的な対応状況を聞いたところ、「緊急連絡網・防災用マニュアル等の整備」(回答率92.9%)、「事業継続計画(BCP)の策定や訓練」(同91.7%)の2項目が9割超となったほか、「防災・避難訓練の実施」や「非常食や飲料水の備蓄確保」で8割超となったが、「仕入・販売先の代替検討」においては約6割程度にとどまる形となった。「仕入・販売先の代替検討」の回答割合が少ない点に関しては、取引先が企業であるか否か、取引内容が物販かサービス提供かなど、企業によって影響度合いが異なることがその要因として挙げられる。
 また、上場区分別の対応状況としては、「上場企業」の方が「非上場企業」よりも、自然災害対策の全ての項目において取り組み度合いが高く、売上高規模別の結果も合わせてみると、「上場企業」や「100億円以上」では、「仕入・販売先の代替検討」以外の項目は約90%~100%となっているのに対して、「10億円未満」では、7~8割程度の数値が多くなっている点で差異が見られる。特に「事業継続計画(BCP)の策定や訓練」や「防災・避難訓練の実施」においては、事業規模が小さい企業での対応が遅れている様子が表れている。(図表C)

 

[Q3] 自然災害発生時における自社の事業活動への具体的な影響は?

 自社の本社所在地において、震度7(東日本大震災クラス)の大地震が発生した場合、自社の事業活動への具体的な影響について聞いたところ、仕入活動や販売活動の停滞、社内システムの障害発生に対して高いリスク意識を有していることが明らかとなった。
 また、自社の事業活動への具体的な影響について、事前災害への対応状況(Q1)別にみると、ほとんどの項目において、「策定済」の方が「検討中・未検討」よりも影響度合いが低い結果となった。特に「販売活動」(回答率の差20.4ポイント)や「社内システム等」(同12.5ポイント)においては、10ポイント以上の差が生じており、各企業が事業活動の継続には「販売活動」や「社内システム等」のリスク低減が優先と考え、優先的に対策に取り組んだ結果が回答結果に表れていると考えられよう。他方、「仕入活動」に関しては、仕入先における災害対策も必要となり、自社の取り組みだけでは十分なリスク低減に至らないという性質が、高い回答率の要因と考えられる。(図表D)

 

[Q4] 震度7クラスの大地震が発生した場合、自社の事業活動への影響は?

 自社の本社所在地において、震度7(東日本大震災クラス)の大地震が発生した場合、自社の事業活動にどの程度の期間が影響あるか聞いたところ、事業の「完全停止期間」としては、「4日以上」(回答率45.8%)が約半数を占め最も多く、次いで「1~3日」(同34.6%)、「0日」(同19.6%)の順となった。約8割の企業が、大地震によって少なくとも1日以上の「完全な事業停止」を見込んでいることがわかった。(図表E)
 また、事業の「完全停止」から「完全復旧」に至るまでの期間を調査したところ、「完全停止4日以上」+「一部停止1か月以内」(同26.2%)の回答が最も多く、次いで「完全停止1~3日」+「一部停止1週間以内」(同24.3%)の順となった。「完全復旧」までに要する期間としては、約1割が「1か月超」、約半数が「1週間超」を要すると考えており、「完全停止」期間を長く見込んでいる企業の方が、「完全復旧」までの期間も長期を想定している様子が表れている。(図表F)

 

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