「中国における斜陽産業調査レポート」発表(リスモン調べ)

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(1)中国の経済状況について

中国における2023年のGDP成長率は5.2%となり、政府が設定したGDP成長率目標は達成された。しかし、中国経済の現状としては、不動産市況の低迷、消費者意欲の低迷、地政学的リスク、地方財政の悪化など、多くの課題が残っており、今後の経済動向を不安視する声も多い。

このような状況の中で実際に業績が悪化しているのは、どの業界なのか。今回の調査では、中国国内の上場企業5,347社のうち、2022年と2023年の売上高を入手した5,330社を分析し、業績が悪化している業種について調査を行った。

 

(2)中国斜陽産業 調査

 調査の結果、2023年決算においては、5,330社の54.8%にあたる2,922社が「増収」で推移しており、41.2%にあたる2,195社が「減収」推移となっていることが分かった。また、2022年決算から10%以上減収している企業は、減収企業の6割近い1,283社となった。(図表1)

 

 続いて、業種内での減収企業の割合について調査したところ、「水利・環境・公共施設管理業」(減収企業割合61.9%)が最も高く、以下、「不動産業」(同54.3%)、「採鉱業」(同49.2%)、「金融業」(同44.3%)、「建設業」(同43.2%)と続いた。(図表2)

 

また、図表2の上位5業種について、業種ごとに減収率の平均を集計したところ、5業種のなかで減収率が最も高かったのは、「不動産業」(減収率 29.6%)であり、次いで「水利・環境・公共施設」(同20.9%)、「建設業」(同20.4%)、「金融業」(同15.2%)、「採鉱業」(同15.0%)の順となった。(図表3)

 

さらに、図表2の上位5業種について、3期連続減収の企業数を集計したところ、企業割合が最も高かった業種は、「不動産業」(3期連続減収企業割合14.3%)となり、以下、「水利・環境・公共施設」(同11.9%)、「建設業」(同10.5%)、「金融業」(同4.7%)、「採鉱業」(同0.0%)という順になった。(図表4)

 

(3)調査結果の分析

 減収企業割合が最も高い「水利・環境・公共施設管理業」の半数は、細分類業種が「生態保護と環境整備業」に該当する企業である。これらの企業の多くは、国や自治体から受注しているため、斯業界においては、現下の中国地方財政の困窮によるインフラ投資意欲の減退が減収の主因と考えられる。

 「不動産業」においては、減収率平均が29.6%に達し、全体平均17.3%より12.3ポイント高い水準となっているほか、3期連続減収の企業割合が最も高く、業況悪化が目立っている。2020年8月に、政府介入によって不動産デベロッパーへの融資および銀行の住宅ローンが規制されたことを契機に斯業界の景況悪化が始まったと考えられる。

 「採鉱業」、「建設業」については、不動産不況の影響によって減収していると考えられる。「恒大グループ」や「碧桂園グループ」を始めとする中国の巨大不動産デベロッパーが相次いで債務不履行(デフォルト)に陥り、中国の不動産市況は大きく混乱した。これにより、不動産デベロッパーの開発投資意欲の低下を招き、不動産業だけでなく、建設業やその上流に位置する採鉱業の業績悪化にもつながったものとみられる。
 また、現在、不動産市況の悪化を受けて、短期・長期ローンや住宅ローンの金利引き下げによる金融緩和政策が進められており、金利による利ざや減少が「金融業」における減収企業割合上昇の一因となっているものと考えられる。

 

(4)まとめ

 今回は、中国の上場企業を対象に、業況が悪化している業種を洗い出すための調査を実施した。
 調査の結果、「不動産業」や「建設業」、「採鉱業」においては、不動産市況の悪化が業績に影響を及ぼしており、「金融業」や「水利・環境・公共施設管理業」においては、金融緩和、インフラ投資の抑制などの経済政策が減収を招く要因となっている様子がうかがえた。

 中国政府は、金融緩和などの政策干渉により不動産不況の解消を目指しているが、効果は薄く、他業界における業況悪化や個人消費の低迷にまで影響が及んでいる。政府の対応が求められる中、7月15日~18日に開催された「3中全会」では具体的な政策は発表されず、景気回復の見通しが立たない状況が続いているため、今後の政府の対応方針に注目が集まっている。

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