調査結果発表:「手形等の決済期限短縮に関する影響アンケート」調査(リスモン調べ)
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リスクモンスター株式会社
データ工場
2024年4月、政府は約束手形や電子記録債権、一括決済方式(以下、手形等)の決済期限について、交付から満期日までの期間を従来の120日(繊維業は90日)から60日に短縮する運用を2024年11月から開始すると発表した。1966年に導入された現行ルールから約60年ぶりの改正となり、改正後は、下請法の適用対象となる取引において60日超の手形等を発行した事業者が、行政指導の対象となる。今回、リスクモンスターが独自に行った「手形等の決済期限短縮に関する影響アンケート」調査に対しては155社から回答が得られた。
回答企業における手形等の利用状況については、4割超の企業が主に回収時に手形等を利用しており、2割の企業は主に支払時に手形等を利用している結果となった。回収時と支払時に同程度利用している企業は約15%であり、約2割の企業では手形等の利用がない結果となった。
手形等の決済期限短縮による資金繰りへの影響については、通常、現金化の短縮につながる回収側にはプラスの影響が生じ、支払原資の手当てが必要となる支払側にはマイナスの影響が生じることが考えられ、本アンケートにおいても同様の回答傾向が表れた。
事業活動への影響については、主に回収時に手形等を利用している企業において、プラスの影響として「借入金の圧縮・減少が進む」が挙げられた一方で、マイナスの影響として「契約変更等の事務負担や営業負担が増加する」ことが、手形等の利用状況に関わらず懸念されていることに関しては、留意事項といえよう。
中小企業におけるゼロゼロ融資の返済負担が本格化する中、本施策は、下請法適用対象の取引における中小企業の資金繰り改善を目的として実施されるものである。本アンケートによると、本施策において、主に回収時に手形等を利用している企業の約半数がプラスの影響があると回答しており、一部に対しては目的どおりの効果が見込まれる一方で、新たな資金調達や事務・営業負担の増加など、企業に新たな負担が生じる面も見込まれている。そのため、取引先の与信判断等においては、本施策が取引先にどのような影響を与えるのかを留意しながら検討することが肝要となろう。
※本調査レポートは、2024年6月27日~7月3日に、リスクモンスター株式会社の会員企業に向けて、メールによるアンケートを実施し、有効回答155件について集計、分析したものである。
[Q1] 手形もしくは電子記録債権を利用していますか?
アンケート回答者に対し、手形等の利用状況について聞いたところ、「主に回収時に利用している(以下、回収時メイン)」が44.5%を占め、「主に支払時に利用している(以下、支払時メイン)」は19.4%、「回収時・支払時に同程度利用している(以下、同程度利用)」は15.5%となった。また、約2割が「手形等は利用していない」ことが分かった。(図表A)
業種別では、製造業(利用率92.9%)および小・卸売業(同87.5%)の9割程度が手形等を利用しているのに対して、サービス業(同59.3%)においては、手形等の利用企業は6割程度に留まった。(図表B)
[Q2] 手形等の決済期限短縮による自社の資金繰りへの影響は?
手形等を利用している企業に対して、決済期限が60日以内と定められた場合、自社の資金繰りにどのような影響があるか聞いたところ、回収時メインの企業では、「プラスの影響がある」が半数近い47.8%を占め、「マイナスの影響がある」が11.6%に留まったのに対して、支払時メインの企業では、「マイナスの影響がある」が半数の50.0%を占め、「プラスの影響がある」は10.0%に留まっており、正反対の回答結果が表れた。また、同程度利用の企業では、「特に影響はない」(回答率50.0%)が半数を占め、「マイナスの影響がある」(同29.2%)と「プラスの影響がある」(同20.8%)がやや近い割合で分け合う形となっている。(図表C)
業種別では、[Q1]において、建設業、製造業、小・卸売業、サービス業のいずれも回収時メインが4~5割を占めていた中で、資金繰りへの影響としては、サービス業において、「プラスの影響がある」(同56.3%)が多いのに対して、小・卸売業では、「マイナスの影響がある」(同33.3%)が「プラスの影響がある」(同23.8%)を上回っているなど、業種ごとに影響の度合いに差が見られる結果となった。(図表D)
[Q3] 手形等の決済期限短縮による自社の事業活動への影響は?
手形等の決済期限短縮により、自社の事業活動にどのような影響があるか聞いたところ、手形決済期限の短縮によるメリットとしては、回収時メイン企業や同程度利用企業においては、「借入金の圧縮・減少が進む」が半数前後を占め最も多く、支払時メイン企業においては、「手形の振出しが減少する」が最多となった。一方で、デメリットとしては、利用状況に関わらず「契約変更等の事務負担や営業負担が増加する(以下、事務・営業負担が増加する)」が最多となっているが、同程度利用企業では75.0%が負担を感じるのに対して、支払時メイン企業では50.0%、回収時メイン企業では37.7%と利用状況によって負担感が異なる様子が表れた結果となった。(図表E)
手形等の決済期限短縮においては、利用状況に関わらず、メリットとデメリットが想定される状況にあるが、特に回収時メインの企業においては、手形の現金化に要する期間短縮によって、借入金の圧縮などの資金繰り改善メリットの方が大きいと考えている様子がうかがえよう。
[Q4] 手形等の決済期限短縮によって自社業界の倒産件数は、どのように変化すると思いますか?
手形等の決済期限短縮により、自社が属する業界での倒産発生にどのような変化が見込まれるかを聞いたところ、「変わらない」(回答率59.4%)が約6割を占めた中で、「増加する」(同23.2%)が「減少する」(同17.4%)を5.8ポイント上回っており、倒産の発生状況に変化が生じるとすれば、増加を見込む企業の方がやや多い様子が表れた。
業種別では、建設業を除いて「変わらない」が過半数を占める中、建設業においては「増加する」(同30.8%)と「減少する」(同30.8%)がそれぞれ30%超となり、6割超の企業が手形等の決済期限短縮によって、倒産発生に変化が生じると見込んでおり、製造業においては、「増加する」(同26.2%)が「減少する」(同14.3%)よりも11.9ポイント高く、倒産発生の増加を予想する企業が多い様子がうかがえる。(図表F)
■リスモン調べ動画
今回発表の『手形等の決済期限短縮に関するアンケート調査』はYouTubeの「リスモンちゃんねる」でもご覧いただけます。
https://youtu.be/bgP5SfxI96I