調査結果発表:「動産・債権譲渡登記設定企業に関する倒産分析(2024年版)」レポート(リスモン調べ)

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調査結果発表:「動産・債権譲渡登記設定企業に関する倒産分析(2024年版)」レポート(リスモン調べ)

 

リスクモンスター株式会社
データ工場

はじめに

[1]債権・動産譲渡登記とは

動産譲渡とは、譲渡人(A)が所有する在庫品や機械設備等の動産を、譲受人(B)に譲渡することである。動産譲渡を行った上で、当該動産の占有・使用の権利を、譲渡後も譲渡人(A)が保持することによって、譲渡人(A)を債務者、譲受人(B)を債権者とする取引(借入金や買掛債務)の担保として活用することができる。
債権譲渡とは、譲渡人(A)が第三者(C)に対して有する債権を譲受人(B)に譲渡することであり、譲渡人と譲受人(B)が債務者と債権者の関係にあるとき、債権譲渡によって、債権者(B)が債務者(A)に代わり第三債務者(C)から債権を回収する権利を得ることができる。
動産(債権)譲渡登記制度は、法人が行う動産(債権)の譲渡について、第三者対抗要件を備えるための制度である。特に債権譲渡において、第三者に対抗するためには、原則として確定日付のある証書によって債務者に対する通知を行うか、債務者の承諾を得なければならないが、債権譲渡登記を行うことによって第三者に対抗することが可能となる。

 

[2]債権・動産譲渡登記の設定件数推移

2012年から2023年までの動産・債権譲渡登記件数の推移において、動産譲渡は、2012年から2015年の3年間で登記件数が倍増し、それ以降は7千~8千件台で概ね安定的に推移している。それに対して、債権譲渡は、毎年3万件以上登記されており、2023年においては、動産譲渡登記の5倍以上の登記件数となっている。

[3]分析データ・グラフの出所

本レポートでは、リスクモンスター株式会社が入手した2022年1月から2024年5月の動産・債権譲渡登記データ65,264件に対して、RM企業情報データベースを照合し、分析を実施した。

 

2.譲渡人属性分析

[1]譲渡人の分類

動産譲渡登記は、在庫品や機械設備などの現物資産を対象としているため、銀行とその他金融業を除いた事業会社(以下、事業会社)での活用(登記件数割合96.8%)がほとんどを占めているのに対して、債権譲渡登記は、債権回収やファクタリングなどの金融取引で用いられやすいため、事業会社での活用は全体の64.4%に留まっている。

[2]譲渡人の売上高規模別分布

事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記について、譲渡人の売上高規模別に企業数割合や登記件数割合を集計したところ、動産譲渡・債権譲渡ともに「1億円以上5億円未満」の企業が譲渡人となっている割合が最も高くなった。他方、登記件数割合としては、動産譲渡では「10億円以上30億円未満」の企業における割合が最も高く、債権譲渡では「100億円以上」の企業における割合が最も高い結果となった。

動産譲渡においては、企業数割合と登記件数割合に大きな乖離が生じていないが、債権譲渡においては、全体の15.1%の企業数に対して、43.0%の登記件数が確認されており、債権譲渡をファイナンスサイクルに組込み、繰り返し活用する大規模企業が多い様子など、動産譲渡と債権譲渡の特性の差がうかがえる。

 

[3]譲渡人の業種別分布

事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記における譲渡人の業種を集計したところ、動産譲渡では、「卸売業、小売業」や「電気・ガス・熱供給・水道業」、「製造業」、「不動産業、物品賃貸業」において、活用度が高く、債権譲渡では、「卸売業、小売業」や「建設業」、「製造業」において、活用度が高い結果となった。

このうち、「卸売業、小売業」と「製造業」においては、動産譲渡と債権譲渡の両方で活用度が高くなっており、特に「卸売業、小売業」では、在庫品や売掛債権を担保として取引を行うことが、他業種に比べて常態化しつつある様子が表れているといえよう。

このほか、「電気・ガス・熱供給・水道業」における動産譲渡の活用度や、「建設業」における債権譲渡の活用度が高い点も、それぞれの業種との取引における留意点として把握しておくべき点といえる。

 

3.譲渡人倒産分析

[1]譲渡人の倒産確率

動産・債権譲渡登記が設定されている「譲渡人の倒産確率」を集計したところ、事業会社全体における倒産確率(0.14%)に対して、動産譲渡登記が設定されている事業会社の倒産確率(0.95%)は約7倍、債権譲渡登記が設定されている事業会社の倒産確率(6.13%)は約44倍の水準であることが判明した。
他方、銀行およびその他金融会社(以下、金融業者)においては、金融業者全体における倒産確率(0.08%)に対して、債権譲渡登記が設定されている金融業者の倒産確率(0.84%)は約10倍の水準であることが明らかとなった。
今回、動産譲渡登記が設定されている金融業者での倒産は確認されず、譲渡登記の設定有無が倒産に及ぼす影響はみられなかったが、動産譲渡および債権譲渡の登記設定情報は、事業会社や金融業者に対する与信管理において重要な情報となることがわかる。

 

[2]譲渡人における売上高規模別倒産確率

事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記における「譲渡人の倒産確率」について、譲渡人の売上高規模別に集計したところ、動産譲渡登記が設定されている事業会社においては、「100億円以上」(倒産確率2.6%)と「30億円以上100億円未満」(同2.0%)において2%以上の倒産確率となった。2.[2]において、割合が高かった「1億円以上5億円未満」や「10億円以上30億円未満」よりも、倒産確率としては高い水準にあるため、売上高規模30億円以上の企業に対する動産譲渡登記の設定は注意を要するといえる。
他方、債権譲渡登記が設定されている事業会社においては、「1億円以上5億円未満」(同9.7%)と「5億円以上10億円未満」(同8.3%)の倒産確率が高く、売上高1億円以上においては、売上高規模が大きくなるにつれて、倒産確率が低下していく様子が表れている。

 

[3]譲渡人における業種別倒産確率

事業会社が譲渡人となっている動産・債権譲渡登記における「譲渡人の倒産確率」について、譲渡人の業種別に集計したところ、動産譲渡登記が設定されている事業会社においては、「製造業」(倒産確率3.4%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(同3.4%)、「卸売業、小売業」(同1.5%)、「農業、林業」(同1.4%)、「不動産業、物品賃貸業」(同0.2%)の5業種のみに倒産が発生していることが明らかとなった。2.[3]において活用度が高かった業種としては、「電気・ガス・熱供給、水道業」での倒産が発生しにくく、逆に、「生活関連サービス業、娯楽業」においては、活用度が低いわりに倒産確率が高いことが注目点として挙げられる。
他方、債権譲渡登記が設定されている事業会社においては、「運輸業、郵便業」(同13.0%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(同11.0%)、「建設業」(同7.7%)、「製造業」(同7.7%)の倒産確率が高くなっており、2.[3]で活用度が高かった「卸売業、小売業」、「建設業」、「製造業」においても、5%前後の倒産確率となっている。中でも、「運輸業、郵便業」と「生活関連サービス業、娯楽業」は、活用度の低さに反して、高い倒産確率となっていることから、注意を要する先といえよう。

 

4.譲受人分析

[1]譲受人の分類

動産・債権譲渡登記が設定された事業会社(譲渡人)について、相手方となる譲受人を集計したところ、企業数としては、「事業会社」(企業数割合49.8%)と金融業(同46.6%)がそれぞれ半数近くを占めた。また、登記件数においては、金融業(同82.8%)が8割超を占め、そのうち銀行業(同48.5%)だけで全体の約半数を占める結果となった。動産・債権譲渡は、資金調達目的として多用されやすいため、譲受人の多くが金融機関となっている。

 

[2]倒産企業(譲渡人)の相手方(譲受人)分析

譲渡登記が設定された事業会社(譲渡人)の倒産について、相手方となる譲受人の属性を集計したところ、「貸金業、ファクタリング業、サービサー」(倒産件数割合41.3%)および「事業会社」(同37.7%)がそれぞれ約4割を占めており、倒産確率においても各10%前後の高い水準にあることが判明した。譲受人の属性は、動産・債権譲渡に伴う倒産リスクとの相関性が表れていることから、注視すべき事項といえよう。

 

5.債権譲渡登記の設定状況と倒産との相関性分析

[1]債権譲渡登記設定から倒産までの期間集計

動産・債権譲渡登記設定日および倒産日のデータを有する事業会社(譲渡人)513社に対して、動産・債権譲渡登記設定から倒産に至るまでの期間を分析したところ、「1~2年」(企業数割合20.9%)が最多となったが、登記設定から1年以内の倒産が63.4%、同じく2年以内の倒産が84.2%を占めていることから、動産・債権譲渡登記設定後、1~2年間は特に倒産発生への警戒を強める必要があるといえよう。

 

[2]倒産企業における債権譲渡登記の設定回数集計

動産・債権譲渡登記の設定回数別に倒産企業割合を集計したところ、「1回」(企業数割合41.7%)が最多となり、2回以下で70.9%を占めた。5.[1]において登記設定から1~2年間での倒産リスクが高い状態にあることを踏まえると、登記設定回数においても複数回の設定よりも初回の設定時における倒産リスクが高いことが想定される。動産・債権譲渡登記の確認時には、閉鎖謄本を取得し消滅した動産・債権譲渡登記の確認を行いつつ、現在の譲渡登記の設定履歴の有無を確認することが、信用判断においては有効と考えられる。

 

以上

 

情報収集の課題はリスクモンスターへご相談ください

今回の「動産・債権譲渡登記設定企業に関する倒産分析(2024年版)」レポートでは、譲渡人の「売上規模」「業種」、譲受人の「属性」、登記設定の「期間」「回数」などの条件によって、倒産確率に大きく変化が生じることがわかりました。企業審査の参考資料としてお役立ていただければ幸いです。

動産・債権譲渡登記の確認が、企業審査のひとつの素材として有効である一方で、日常業務の中で取引先の登記設定状況を毎月確認することは、業務負担が大きく、実際には情報収集していない企業様がほとんどです。

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