「中国半導体事業 2024年業界速報」発表(リスモン調べ)
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リスクモンスター株式会社
データ工場
2023年に発売されたファーウェイのスマートフォン「Mate 60 Pro」には、中国企業の中芯国際集成電路製造(以下、SMIC)の開発した業界最先端のプロセッサーが搭載され、その技術力の高さが世界の注目を集めた。昨今、半導体事業で存在感を高めている中国に対して、アメリカ政府は、最先端半導体の軍事利用の危険性を恐れて2022年から半導体の輸出規制を行い、米中対立が高まっている。今回は、技術的・政治的観点から動向が注目されている中国国内の半導体事業について現況を調査した。
中国への半導体輸出規制措置と日本への影響
アメリカ政府は、2022年10月に半導体および半導体製造装置の中国への輸出制限措置を発表し、その後も対象品目を拡大するなど、規制を強化している。(表1)さらに、日本・オランダ・ドイツ・韓国を含む同盟国に対しても規制への同調を求め、日本政府はアメリカ政府の要請に応じて、2023年に先端半導体の製造装置などの23品目を輸出管理の規制対象に加えた。
しかしながら、日本の半導体製造設備の輸出先としては、中国(48.5%)が全体の半分近くを占めており(図1)、加えて、日本の半導体関連企業らが中国に進出している(表2)ことも合わせて考慮すると、今後も規制強化が続く場合には、それらに関係する日本企業への影響が懸念される。
中国の半導体事業の状況
中国政府は、2015年7月発表の「中国製造2025(中国国内の製造業に対する10年間の政策方針)」の内容を踏まえて、半導体の自給率を2020年に49%、2030年に75%に引き上げる計画を策定し、計画達成に向けた半導体開発支援の強化策として、2014年秋に「国家集積回路産業投資基金」を設立し、「中国製造2025」の先陣を切った。
「国家集積回路産業投資基金」は、過去2回(2014年に第一弾として投資規模1,387億元、2019年に第二弾として投資額2,000億元超)にわたって半導体産業への大規模な投資を行い、2023年10月に第二弾の一環として実施された国内半導体メモリー企業への145億6,000万元(2,912億円 1元=20円)の巨額出資は話題となった。
半導体事業への継続的な大規模投資の結果、半導体製造装置に関しては、北方華創科技集団(NAURA Technology Group)、中微半導体設備(AMEC)など、中国メーカーの生産・技術力の向上が国産化率を押し上げ、2022年には国産化率が35.0%(前年比+14%)に達している。
また、冒頭で紹介したSMIC以外にも、売上高100億元を超える半導体メーカーが存在しており、中には2000年以降に設立し、事業拡大において中国政府による投資の恩恵を受けた企業もある。(表3)
2023年7月~9月における半導体スタートアップへの投資額としては、中国が全世界の60%を占めており、今後も「国家集積回路産業投資基金」による第三弾の投資など、中国政府の積極的な半導体事業への投資実施が予想される。
このような国家的な半導体事業推進によって、半導体製造装置のように一部においては、国産メーカーのシェア拡大が確認されているものの、集積回路においては、2023年時点で輸入量が輸出量の2倍に近い水準(図2)となっており、いまだ半導体の供給を輸入に頼っている状況がうかがえる。
また、市場調査会社IC Insightsが2022年5月に発表した記事によると、中国における集積回路の売上額は成長基調にあり、2021年には2010年の約2.5倍となった一方で、国内生産額の成長速度は売上額に比べて遅く、国内自給率の停滞につながっている。(図3)
2021年時点では、中国における集積回路の売上額1,870億ドルのうち、国内生産額は312億ドルであり、そのうち、中国メーカーの生産額(123億ドル)は売上額に対してわずか6.6%となっている。(図4)それ以外は、TSMC、SKハイニックス、サムスン、インテル、UMCなどの中国に製造工場を持つ外資系企業が生産したものであるという。
「中国製造2025」を受けて、2020年に集積回路の自給率を49%達成するという目標を設定した中国政府であったが、2021年時点での集積回路自給率は16.7%にとどまり、外資系企業を除いた中国メーカーのみの自給率に至っては6.6%と、目標値から大きく逸脱して未達となった。目標未達の要因としては、著しく速い半導体需要の増加速度に対して、国内メーカーの技術面など、供給の成長速度が追い付いていないことが挙げられる。
アメリカ政府による半導体輸出規制措置を受け、中国国内の半導体自給率問題はより切実な問題となっているため、中国政府による半導体事業への積極投資によって、今後中国の半導体メーカーがどれほど成長していくのか、注目が集まっている。
まとめ
中国は、半導体技術をはじめとして、EV技術・風力発電などの最先端科学の技術力を高めることで、世界での影響力を強めている。アメリカによる経済的規制により、半導体材料や半導体製造装置などの輸入が難しくなり、中国の半導体事業者は苦境に立たされているが、それが逆に中国政府による半導体事業への積極投資につながっていることで、国産化が進む契機になり得ている。
世界最大の半導体市場となっている中国は、日本にとって最大の半導体製造装置輸出国であり、中国に進出する日系企業も少なくない。しかし、中国の半導体をめぐる米中対立の構造には、日本も大きく関わっているため、中国での事業展開を検討する際には、カントリーリスクを考慮しながら慎重に判断することが肝要といえる。
<参考資料>
中華人民共和国海関総署
http://www.customs.gov.cn/
半導体行業観察ICinsights
http://www.semiinsights.com/s/electronic_components/23/45659.shtml
探迹 (tungee.com)
https://www.tungee.com/support/business-share/detail/63f345df46f94c107e114830.html
財務省貿易統計
https://www.customs.go.jp/toukei/info/index.htm