調査結果発表:第1回「DX認定企業」分析(リスモン調べ)
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リスクモンスター株式会社
データ工場
はじめに
1.DX認定制度の概要
DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づく認定制度。デジタル技術による社会変革を踏まえた対応指針が記された「デジタルガバナンス・コード」に沿って、経営ビジョンの策定やDX戦略・体制の整備を行い、DX推進の準備が整っている(DX-Readyの状態)事業者を国(経済産業省)が認定しているもの。
DX 認定制度事務局(独立行政法人情報処理推進機構)サイト : https://www.ipa.go.jp/ikc/info/dxcp.html
2.経済産業省におけるDXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、
顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
出所:IPA(https://www.ipa.go.jp/ikc/info/dxcpfaq.html#Q1-010)
3.DX認定のポイントについて
DX推進の「準備や前提の部分」がDX認定基準となっており、現時点でDX推進による成果が出ている必要はない。
なお、DX推進の「準備や前提の部分」は、「経営者自身のリーダーシップの下で、DXによる自社変革の方向性や具体的戦略が示され、戦略の推進・管理が行える」準備状況を指しており、このような準備状況を対外的に公表できていることがDX認定のポイントとなる。
4.DX認定の有効期限
DX認定の適用日から2年間
5.DX認定件事業者数(2022年6月時点)
420事業者(法人:415社 個人事業主:5事業者)
6.分析データ・グラフの出所
DX推進ポータル(https://disclosure.dx-portal.ipa.go.jp/p/dxcp/top)より、DX認定事業者一覧の法人番号を取得。法人番号をキーコードとして、RM独自DBの企業情報を紐付し分析を実施。本レポートでは、法人の認定事業者415社を分析対象とした。
分析結果
[1]DX認定事業者数の推移
2022年6月時点のDX認定事業者数(法人)は、415社となった。DX認定は、「企業のDX戦略」のアピールに活用できるほか、経済産業省と東京証券取引所が連携して取り組んでいる「DX銘柄」及び「DXグランプリ」、「DX注目企業」の選定条件となっていることから、ディスクロージャーを重視する上場企業を中心に認定が進んでいる。リスクモンスター(スタンダード上場)においても、AI技術を活用したサービス提供が評価され、2022年3月にDX認定を取得している。(図表A)
3か月毎のDX認定を受けた事業者数の推移としては、2021年及び2022年において「4月~6月」の認定が多くなっている。制度初年の「2021年4月~6月」は、「DX銘柄2021」のエントリーに合わせてDX認定を申請した上場企業が多く、プライム市場を中心とした上場企業がDX認定事業者の大多数を占めている。
一方で、直近の「2022年4月~6月」は、非上場企業の認定が過半数を占め、認定事業者数としても四半期別で過去最多の116社となった。DX認定制度開始以降、国内最上位のプライム市場に上場する企業が続々とDX認定を取得する中で、「DX認定企業=上場企業/優良企業」というイメージが浸透した結果、企業のブランド価値や信用力の向上につなげるためにDX認定取得を試みる企業が増加していることが考えられる。
DX認定においては、申請から認定取得までに、経営者が自社の事業環境やビジネスモデルを見つめ直すプロセスが設けられている。DX認定制度開始から1年半が経過し、デジタル技術を活用した明確な事業戦略を保持している企業が、上場企業だけでなく非上場企業にまで広がっている様子が表れている。
[2]DX認定事業者の業種構成
DX認定事業者の業種構成としては、「製造業」(95社)が最も多く、次いで「情報通信業」(85社)、「卸売業 ,小売業」(65社)となった。2022年6月時点においては、デジタル技術と親和性の高い「情報通信業」よりも「製造業」の方が、DX認定事業者が多い結果となった。
上場市場別の業種構成としては、プライム上場の「製造業」(78社)が最も多く、次点のプライム上場の「情報通信業」(35社)や「卸売業,小売業」(38社)の2倍超となっている。一方で、非上場企業においては、「情報通信業」(38社)が最も多く、「卸売業,小売業」(24社)、「金融業,保険業」(20社)の順となり、「製造業」(15社)は非上場の上位3業種に入らなかった。
DX認定に関しては、「製造業」の上場企業が、特に強い関心を持っている様子が表れている。背景としては、製造業の慢性的課題である「人手不足」、「俗人的改善による部分最適」(『2021年版 ものづくり白書』経済産業省より)や世界情勢の変化を背景とした先行き不透明な事業環境に対する危機感があると思われ、「製造業」の中でも業界をリードする上場企業が先行してDXの取り組みを進め、競争力の強化を図ろうとしていることがうかがえる。(図表B)
[3]DX認定事業者が多い上位業種の中分類内訳
DX認定事業者の上位業種である「製造業」、「情報通信業」、「卸売業,小売業」の中分類業種(日本標準産業分類)を調査したところ、「製造業」では「化学工業」(15社)、「情報通信業」では「情報サービス業」(66社)、「卸売業,小売業」では「機械器具卸売業」(18社)が最も多い結果となった。「情報通信業」において「情報サービス業」への偏りが大きいことが特徴的である。
「情報サービス業」(66社)は、主に受託開発ソフトウェア業、情報処理サービス業、パッケージソフトウェア業等を担う業種であり、リスクモンスターも「情報サービス業」に含まれる。「情報サービス業」は、各産業のデジタル化支援を担う中心的な業種であるといっても過言ではなく、今後のDX認定事業者数増加が期待される業種の一つであるといえる。
また、DX認定制度だけではなく、2021年9月に発足したデジタル庁の影響もあり、デジタル・ガバメント構築に向けた官民のITシステム投資の機運が高まっていることから、デジタル化推進の文脈において、「情報サービス業」の存在感は、より一層高まることが予想される。(図表C)
[4]DX認定事業者の業種と売上高規模比較
DX認定事業者の売上高規模としては、「100億円以上」(319社)が最も多く、次いで「10億円~50億円未満」(43社)、「50億円~100億円未満」(23社)となり、全体の76.9%が「100億円以上」の大企業であった。[2]DX認定事業者の業種構成DX認定事業者 より、上場企業が279社(構成比67.2%)であることを踏まえると、非上場企業においても、事業規模の大きい企業のDX認定が多いことがうかがえる。
業種別売上高規模別の状況としては、売上高「100億円以上」の「製造業」(84社)、「卸売業,小売業」(54社)、「金融業,保険業」(50社)の順にDX認定事業者数が多い。「情報通信業」においては、売上高10億円以上の企業において各レンジ10社以上のDX認定実績がある一方で、「情報通信業」を除くほとんど全ての業種において、売上高「100億円以上」の企業に偏る結果となっている。非IT系の業種においては、業界をリードする事業規模の大きい企業がDX認定の取得に積極的である様子が表れている。
昨今のビジネス潮流において、事業運営へのデジタル技術の活用は、業種を問わず、全ての企業の必須条件となりつつある。事業規模の大小に関係なくDXが浸透する業種こそ、成長が期待できる業種であるといえよう。今後、売上高規模の小さい企業においても、DX認定の取得が進むことを期待したい。(図表D)
[5]DX認定事業者の資本金と業歴比較
DX認定事業者の業歴としては、「50年以上」(231社)が最も多く、次いで「20~30年未満」(45社)、「10~20年未満」(42社)の順となった。業歴「50年以上」の大半は、資本金「100億円超」(165社)であることから、老舗大企業がDXへの取り組み意識が高いことがうかがえる。
法人税法上の中小企業にあたる資本金「1億円以下」(75社)の業歴に注目すると、「10年未満」(19社)が最も多く、次いで「50年以上」(18社)となった。中小企業においては、業歴による偏りは少なく、若い企業から老舗企業までDXに取り組んでいるといえる。
日本のインターネットやデジタル技術が1990年代以降に普及したことを踏まえると、業歴「50年以上」の企業は、デジタルを前提としないビジネスで設立し、現在のDX認定取得にまで至った先であるといえる。業歴「50年以上」の231社については、時代の変化を上手く捉えて対応することのできる企業であり、特に業歴「50年以上」かつ資本金「100億円超」の企業は、潤沢な資本体力を武器として、時代の変化に対して柔軟に対応できる企業といえよう。(図表E)
総評
経済産業省が推進するDX認定制度にいて、2022年6月時点のDX認定事業者(法人)415社の状況をまとめたものが本レポートである。日本の法人企業数が約500万社と言われる中で、DX認定は、日本企業全体の0.008%しか取得していない希少な認定制度であり、当該415社はDXに積極的に取り組む先進的な企業であるといえる。
DX認定事業者一覧を確認したところ、有名かつ優良な企業が多く名を連ねており、企業のセグメント別分析においても、上場企業や売上高・資本金規模の大きい企業が多いことがわかった。また、リスクモンスターが提供する信用格付けであるRM格付を確認したところ、高格付(A~C格)企業が全体の8割超を占めており、信用力という基準においても、評価の高い企業がDX認定を取得していることがわかる。(図表F)
DXは、経済産業省がまとめたDXレポート(2018年)を発端に、現在に至るまでに日本のビジネスシーンの一大トレンドとなった。同レポートの中で議論となった「2025年の崖」まで残り3年と迫る中、DXの取り組み可否に応じて、企業の淘汰が急速に進んでいくことも十分に考えられる。現時点で国内法人の0.008%のみに留まっているDX認定事業者が、どの程度増加していくかが、今後の日本経済の競争力を測る一つの指標となり得るだろう。
現在DX認定を取得している事業者においては、DXに取り組むリーダーとして、DXを活用した事業展開を進め、日本経済全体を牽引する活躍を期待したい。
当社、リスクモンスターにおいても、与信管理事業を中心にDXを活用したサービスを提供し、日本経済に貢献できるように努めて参ります。