りすもん与信管理講座「決算書を読み解く②~決算書から財務比率分析を行う」

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りすもん与信管理講座「決算書を読み解く②~決算書から財務比率分析を行う」

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りすもん与信管理講座「決算書を読み解く②~決算書から財務比率分析を行う」
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【1】財務比率分析の基本

 決算書は、ただ眺めるだけでは単なる数字の羅列にすぎませんが、財務指標
を使用した分析を行うことで、企業の収益構造や強み、問題点、粉飾の有無、
不良要素等を把握できるようになります。
 しかしながら、単に数値のみを見て、それらを判断することは困難です。企
業の現在までの推移や業界特性などを加味する必要があり、そのために決算書
は直近1期分のみではなく、複数期分を入手し、その推移を見て、比較するこ
とが望ましいと言えます。また、同業他社の財務内容との比較や過去の経験や
一般常識に照らして、多面的に分析することが重要です。
 財務分析としては、一般的に次のものが挙げられます。

【2】安全性分析

◆自己資本比率
 企業の長期的な安定性は純資産(自己資本)の多寡にかかっています。自己
資本は返済の必要がない自前の資金であり、自己資本の割合が大きければ大き
いほど、借入などの他人資本への依存度が低くなり、経営は安定していると言
えます(図表3−3)。
 自己資本比率は、業種にもよりますが30%を超えているようであれば問題
は小さいでしょう。逆に10%を下回ると注意が必要であり、マイナスの場合
(債務超過)は、警戒が必要な状態と言えます。

                   自己資本
      自己資本比率(%) = ————— × 100
                    総資本
 
◆総借入月商比
 借入月商比は、借入金が月商の何倍の規模であるかを表す指標です。借入金
と売上高を比較することで、借入金の規模が当該企業の事業規模と見合ったも
のかを測るための材料として活用することができます。
 借入月商比の水準としては、一般に月商の5カ月分程度の借入金を有してい
ると、借入過多と判断されることが多いですが、製造業等のような装置産業に
おいては、事業を行う上で最初に設備投資をすることが前提となり、設備投資
のための借入金がかさむために借入月商比は大きくなる傾向があります。逆に、
商社(卸売業)などでは、売上高の規模が大きく、設備投資も比較的少ないこ
とから、借入月商比は小さくなりやすいです。

                      総借入
      総借入月商比(カ月) = —————
                     月商

  注:総借入=短期借入金+1年以内返済長期借入金+1年以内返済社債
+長期借入金+社債+割引手形

◆流動比率
 企業の支払能力を見る指標の一つに流動比率があります。これは、短期の支
払能力の有無を見るものであり、1年以内に現金化できる資産である流動資産
(現金・預金、受取手形、売掛金、在庫など)と、1年以内に支払わなくては
ならない負債である流動負債(支払手形、買掛金、短期借入金など)とのバラ
ンスで判断します。当然ながら、入ってくる資金と出ていく資金とでは、入っ
てくる資金の方が多く、流動比率は少なくとも100%を超えていることが望
ましいと言えます。

                 流動資産
      流動比率(%) = ————— × 100
                 流動負債

【3】回転率・回転期間分析

◆総資本回転率
 投下した資本が年間に何回転して、売上高としてどう回収されたかを見てい
く指標が、効率性分析の基本手法である総資本回転率です。少ない資本で、で
きるだけ多くの売上高を上げれば、資本は有効に利用されたことになります。
したがって、回転数は多いほど資本が効率的に活用されていると判断できます。
総資本回転率は1回を超えていることが望ましいですが、流通業は比較的高く、
多額の設備投資が必要な製造業などは低くなる傾向にあります。

                   売上高
      総資本回転率(回) = ————
                   総資本

◆売掛債権回転期間
 販売してから代金を回収するまでに何カ月要しているかという回収サイトが
わかります。売掛債権の回収は早いに越したことはありません。したがって、
売掛債権回転期間はできるだけ短い方がよいことはもちろんですが、業種特有
の商慣習も勘案しながら分析することが重要です。
 期間が短期化した場合は、回収努力や販売条件改善を行っているなどプラス
材料とみるのが一般的ですが、逆に長期化した場合は、押込販売の実施や回収
条件の悪化、不良債権の発生、融通手形の発生、粉飾などのマイナス要因が発
生している可能性を疑う必要があります。

                      売掛債権
      売掛債権回転期間(カ月) = —————
                         月商

  注:売掛債権=受取手形+売掛金+工事未収入金+裏書譲渡手形+割引手形

◆棚卸資産(在庫)回転期間
 棚卸資産回転期間は、棚卸資産が仕入から販売まで在庫として何カ月間保有
されているかを表します。短期間で販売できる方が好ましいのは言うまでもあ
りませんが、在庫量を減らしすぎると品切れを起こし、売上機会の損失が生じ
ることも考えられるため、業態に合った適正な在庫期間であることが重要です。
 また、棚卸資産回転期間が短く、業績が順調な場合は、販売促進に伴う在庫
の圧縮や在庫管理の徹底といった経営努力を評価してもよいでしょう。しかし、
長期化している場合は、過剰在庫の存在、不良在庫(デッドストック)の発生、
架空在庫や水増し在庫の計上等の粉飾に注意する必要があります。

                       棚卸資産
      棚卸資産回転期間(カ月) = —————
                        月商

◆買掛債務回転期間
 仕入から支払いまでに何カ月猶予があるかという支払サイトがわかります。
商慣習を勘案しながら、適正かどうかを判断することが重要です。期間が短期
化した場合は、手元資金に余力があって現金買いの比率を高めている可能性が
ありますが、与信枠の減少から現金買いでなければ仕入ができなくなっている
懸念もあります。逆に長期化している場合は、販売不振に陥って資金調達が間
に合わず支払サイトを延長している懸念もあり、注意が必要です。

                         買掛債務
      買掛債務回転期間(カ月) = ——————————
                        一月当たりの仕入高

  注:買掛債務=支払手形+買掛金+工事未払金+裏書譲渡手形

【4】 収益性分析
 収益性分析は、売上高や総資本などに占める各種の利益の割合を分析し、利
益を生み出す力を見るものです。売上高に対する利益の割合を示すものが売上
高利益率になります。分母を売上高(年商)とし、分子にどのような利益を使
用するかによって、売上高利益率の呼称が変化します。

◆売上高総利益率
 売上高総利益率は、利益の源泉である売上総利益(粗利益)を売上高で割っ
た比率で、粗利益率(粗利率)ともいいます。原価に対してどれだけの利益を
載せて販売できているかを示す指標で、企業の収益力を分析する際、この推移
を分析し、さらに他社と比較することは非常に重要です。

                     売上総利益(粗利益)
      売上高総利益率(%) = ——————————— × 100
                         年商

◆売上高営業利益率
 売上高営業利益率は、企業の営業活動で生み出された営業利益を売上高で割
った比率です(図表3−6)。商品自体の収益力だけでなく、販売組織の効率性
などを含めた収益性が高いかどうかを示す重要な指標です。業種平均との比較、
同業他社との比較、過去の実績との比較が重要です。

                     営業利益
      売上高営業利益率(%) = ————— × 100
                      年商

◆売上高経常利益率
 売上高経常利益率は、企業の包括的な収益力である経常利益を売上高で割っ
た比率です(図表3−7)。企業が1年間にどれだけ効率よく利益を上げるこ
とができたかを示すもので、企業の総合力がわかる代表的な指標と言えます。

                     経常利益
      売上高経常利益率(%) = ————— × 100
                       年商

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