「与信ポートフォリオ分析(第2回)~与信リスクの定量化」
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りすもん与信管理講座
「与信ポートフォリオ分析(第2回)~与信リスクの定量化」
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今月は4回にわたって、与信管理ルールを構築・運用していくために重要な
「与信ポートフォリオ分析」についてご説明しております。
取引先全体の状況分析、自社が抱える与信リスクの算出、要管理先の選定などに
利用できるたいへん有用なものです。手法や効用について詳しく解説していきます。
一つ一つの取引先の分析ももちろん大事ですが、一つの案件にこだわっていると
本当に管理が必要なリスクを見逃してしまう危険性があります。
まさに「木を見て森を見ず」の状態に陥ってしまいます。
そうならないよう に取引先全体を把握した上で、リスクが高い案件に効果的に
経営資源を配分できるよう、リスクに応じて濃淡管理していく、
その道しるべとなるのが与信ポートフォリオ分析なのです。
第2回は与信リスクの定量化について解説します。
1.与信リスクの定量化の意義
果たして今行っている取引の与信リスクはどの程度で、また、そのリスクに
見合った正な口銭率、管理コストはいくらであるのか把握しながら取引されていますか?
それがわかれば、必要な引当金や、取引を行うべきかどうか、どこを重点管理
していけばよいのかを決定する一つの指標になるでしょう。それは業務の効率化にもつながります。
営業部門としては利益率を何%上乗せすることができるかが重要になりますが、
管理部門としては損失率を上げずに、経費率を削減することが利益に対する貢献となります。
しかし、管理部門の業務効率化に伴いリスクが増加したのでは、まったく意味がありません。
だからといってすべての案件に手間暇をかけると経費もかかり、
また、取るべきリスクも取れなくなり、利益の出ない体質になってしまいます。
つまり、全社またはグループ全体の与信リスクを定量的に把握し、
それに対して管理コストをどの程度かけていくのかといった考え方が、与信管理ルールを
構築する際には不可欠と言えます。
設定した与信管理ルールが与信リスクをどの程度カバーするもので、
それに関する費用がどのくらいかわかれば経営者にも社員にも、さらには外部にも納得が得られやすくなります。
また、その見直しもスムーズとなるのです。
2.取引先分布の分析
第1回で解説しました取引先の洗い出しを進めます。また社内格付を付ける
必要な企業データの収集を行います。
グループ全体での分析を行う時は、取引先の洗い出し時に支店やグループ会社
が有している企業データを一緒に記載してもらうことが望ましいでしょう。
格付を付与するために必要な企業データが不足している場合は、信用調査会社など
からデータを入手します。そして、取引先ごとに格付を記載していきます。
なお、格付は全 取引先に対して行うのが理想的ですが、
コストと時間の問題があり、なかなか全取引先に対して実施するのは困難だと思います。
そこでどれだけの取引先、与信額に対して実施するのかというカバー率が問題となります。
ここでは、全社またはグループ全体の与信リスクを把握することが目的なので、
全与信額の80%以上は格付を実施することが一般的です。これ以下では、
全体の与信リスクを分析しているとは言えず、有効な分析とは言えません。
3.与信リスクの定量化
取引先リストに格付が記載できれば、次は格付ごとにその件数と与信額を
集計します。そうすることで、格付ごとの件数と与信額の分布を把握することができます。
格付ごとの取引先数と与信 額の分布が把握できれば、次は与信リスク(引当金)を
算出する作業を行います。リスクを算出する方法はいくつかありますが、
考え方が容易である点から今回は引当金を算出する手法をご紹介します。
洗い出した取引先に対する与信残高または与信限度額を格付ごとに集計します。
その集計した数字に格付ごとの倒産確率を掛け算します。そうすることで
与信リスクを容易に計算することができます。
これは、年間に発生するであろう損失の平均値となりますので、
リスクを取ることに対する必要なコストとして、P/L上の経常利益の中でカバーすべきものとして考えられます。
つまり、引当金が経常利益を下回るように調整することが大切です。
これにより、全社またはグループ全体での収益力と比較して与信リスクを取りすぎて
いないかということもチェックできるようになります。
経営陣に与信リスクを報告できれば、与信管理のコスト配分を行う意思決定も容易
となり、与信管理を強化すべきか、営業を強化すべきかを決定できるようになるのです。
収益力を超えてリスクを取りすぎている場合は、早急に与信リスクが大きな取引を
避け、リスクを減少させる施策を取る必要があります。また超えていない場合でも、
そのリスクを減少させていくべく、効率的なルールを設定していくこととなるのです。
次回は与信管理を効率的または有効に行う上で必要なルールの設定に関する考え方を解説します。
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