りすもん与信管理講座『倒産のメカニズム その2』

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 りすもん与信管理講座『倒産のメカニズム その2』     
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【3】 原因別の倒産分類

 倒産に至るメカニズムについて述べてきましたが、倒産はそこに至る主な原
因から、不況型倒産と不況型以外の倒産に分けることができます。

◆不況型倒産
 不況型倒産の原因には以下の三つがあります。
① 販売不振
  売上減少が経営圧迫の第一原因です。販売不振につながる要因はいろい
ろありますが、例えば製品(商品)の陳腐化、業界全体の衰退、同業大手
の進出、不況による需要減退などが挙げられます。
② 赤字累積
  急激な販売不振による資金ショートではなく、長い期間にわたって積み上
げられていく赤字は、企業の慢性疾患と言えます。
③ 売掛金回収難
  販売先の資金難や、商品・工事に対するクレームなどから売掛金が長期に
わたり回収できないために資金ショートにつながり、倒産することがあり
ます。

◆不況型以外の倒産
 不況型以外の倒産の原因については、代表的なものとして以下の五つがあり
ます。
① 他社倒産の余波(連鎖倒産)
  取引先が倒産すると、貸倒れの発生などにより資金不足が生じます。資金
 不足を借入金などの資金調達で解消できない場合、企業は連鎖倒産します。
② 信用性低下
  経営者の不祥事や役員間の内紛、経営内容の悪化から、それまで支援して
 いた取引先が援助を打ち切るケースです。
③ 過小資本
  資金背景が脆ぜいじゃく弱な企業が無理な営業規模の拡大を行い、予期せ
 ぬ貸倒れや資金回収の見込み違いに対応することができず、破綻することがあ
 ります。業歴が浅い、急成長企業に多く見られます。
④ 設備投資過大
  積極的な拡大経営も、マーケットリサーチが甘かったり、自社の財務体力
 を過信したりすると過大投資となり、資金破綻を招くことがあります。ま
 た、本業以外に投機を行ったことによる失敗も倒産の発生原因になります。
⑤ 放漫経営
  主に経営者の資質、能力に関わるものです。経営者の経験や能力不足によ
 る判断ミス、意欲の喪失などで破綻するケースです。

形態別の倒産分類
 通常、倒産というと、企業が消滅してしまうことが想起されると思いますが、
企業の存続を前提とし、企業を再生させる形態も倒産に含みます。取引先が不
渡りを出すなど、倒産あるいはその恐れがある場合には、債権・債務をいかに
処理するか、という問題が生じます。こういった問題を解決するために、さま
ざまな倒産処理手続があります。

 

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 倒産処理の形態は、大別すると以下のようになります。

◆法的整理
「法的整理」は、債務者が通常の方法により全債務の弁済ができなくなった時
あるいはその恐れがある場合に、裁判所の監督のもとで行う倒産手続のことで、
民事再生、会社更生といった再建型法的整理手続と、破産、特別清算といった
清算型法的整理手続に分けられます。法的手続では、裁判所の関与のもと、法
の定めに従って処理がなされるため、債権者が平等に扱われるというメリット
があります。

① 民事再生手続
  2000(平成12)年4月より施行された、民事再生法による再建型の法
 的手続です。手続としては、早期に再建を目指す債務者にとって使いやす
 く、柔軟性にも富み、迅速な処理も可能にしたものとなっています。適用
 対象は株式会社に限らず、会社・社団・財団・組合などあらゆる形態の法
 人と個人を含みます。
  債務超過や支払不能など破産手続開始原因となる状態に陥らなくても、
 「破産手続開始原因の生ずる恐れがある時」または「事業の継続に著しい支
 障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない時」は申立
 ができる点が特徴です。
  したがって、債務者にとっては、倒産に伴う資産の劣化や従業員の離散を
 最小限に食い止め、体力を温存しながら早期に過大な債務をカットし、身
 軽になった上でM&Aなどを実行することも可能となる手続ですが、債権
 者にとっては、先に述べた兆候をつかみきれずに倒産に至る場合があると
 いう点で、非常に厄介な倒産形態とも言えます。

② 会社更生手続
  経済的に窮境にあるが再建の見込みのある株式会社について、破産を避け
 て再建を目指す再建型の法的手続です。会社更生手続は民事再生手続と違
 い、株式会社しか適用されず、合資会社や学校法人などその他法人や個人
 などは申立ができません。
  また、民事再生手続が、一般の債権者のみが権利変更の対象となり債務者
 主導で進められるのに対し、会社更生手続では、担保権者や株主まで権利
 変更の対象となり、経営陣は経営から排除され、裁判所主導で再建を進め
 ることとなります。このことから、社会的に影響の大きい大会社向けの手
 続といわれます。
  申立要件としては、民事再生手続同様「破産手続開始原因の生ずる恐れが
 ある時」または「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債
 務を弁済することができない時」に可能となります。

③ 破産手続
  債務を完済することができない債務者などの全財産を破産管財人が管理・
 換価し、債権者の優先順位と債権額に応じて公平な弁済を図ることを目的
 とする清算型の法的手続です。再建型と大きく違う点は、手続終結後、会
 社は清算され、消滅してしまうことです。
  支払不能または債務超過を理由に破産の申立を裁判所に行うことができ、
 裁判所は破産手続開始原因があると認めると、破産手続開始決定を出しま
 す。破産では、裁判所が任命する破産管財人によって、債務者の資産整理、
 債権者への分配が行われ、債権者は原則として個別の権利の行使が禁止さ
 れます。

④ 特別清算手続
  解散後清算中の株式会社について、清算の遂行に著しい支障を来すべき事
 情または債務超過の疑いがある場合に開始される、裁判上の特別な清算手
 続です。法的な倒産手続の一つとして、裁判所の監督のもとで行われる手
 続ですが、簡易・迅速に行われ、通常の清算手続と破産手続との中間的な
 性格を有します。
  申立は債権者、清算人、監査役または株主に限られます。

◆私的整理
「私的整理」とは、裁判所の監督による法的整理によらないで行う倒産処理の
手続のことです。実際に商取引を行っていく上で遭遇する倒産事件は多種多様
であり、法的整理の手続を取らずに一部大口債権者と協議し、資金繰りの破綻
を回避しつつ内々に整理を行う「内整理」や、処理を行わずに夜逃げをしてし
まう場合もあり得ます。負債総額が小さいか、もしくは債権者が少ないか、あ
るいは配当すべき資産もないことが多くなります。
 「不渡り」とは、手形や小切手の支払期日が過ぎても、債務者から債権者へ
額面金額が引渡されずに決済できないことです。不渡りには3種類ありますが、
通常、不渡りといえば支払資金不足など振出人の信用に関わる1号不渡りを指
します。
 1号不渡りを出すと、手形交換所規則に基づく「不渡り処分」を受け、全金
融機関に通知されます。この1号不渡りを6カ月以内に2度出すと「手形交換
所取引停止処分(銀行取引停止処分)」となり、金融機関と2年間当座取引・
貸出取引ができなくなります。
 取引の決済は金融機関との取引によって行われることが多いことから、この
手形交換所取引停止処分は、実際に事業ができなくなるという意味で「事実上
の倒産」と考えられます。
 私的整理のメリットとしては、手続が簡単で費用があまりかからず迅速な処
理が見込まれる、法的整理によるよりも早期に高い配当が期待できる、秘密裏
に手続を行うことが可能である、などが挙げられます。
 一方で、デメリットとしては、立場の強い債権者が利益を得る可能性が高
く、債権者間の平等が図られない、全債権者に対して強制力・拘束力が及ばな
い、債権者側が債務免除を行った場合、税務上の損金として扱われないことが
ある、などが挙げられます。

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