「債権保全の重要性(第1回)~債権保全の方法とは?」

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りすもん与信管理講座

 「債権保全の重要性(第1回)~債権保全の方法とは?」      

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今月は、与信管理にとって重要な「債権保全」について、4回にわたってご説明します。

具体的な債権の保全措置の方法や種類、保全取得の手続きの流れについて説明してまいります

ので、要注意先に対する債権の保全策のご参考としてください。

 

第1回 債権保全の方法とは?

 

【回収方法を工夫する】

 

[方法その1] 回収方法を売掛から手形に変更する

 

意外に思われるかと存じますが、同じ回収サイトであれば、売掛金を手形化することは、債権管

理・回収上、非常に有益な手段と言えます。なぜなら手形には、売掛金にはない手形独特のメリッ

トがあるからです。以下にそのメリットをご説明いたします。

 

[1] 支払・取り立てが確実になる

 

手形を振り出した取引先が支払を拒絶し手形決済ができない場合は、手形不渡り処分、銀行取

引停止処分という強い制裁を受けるため、取引先は手形債務を何とかして決済しようとします。

また、手形金の取り立ては取引先に対して催告する必要がなく、取引銀行に取り立てを依頼する

だけでよいという利便性があります。

 

[2] 譲渡(換金)が簡便になる

 

売掛金などの債権と異なり譲渡手続きが簡単なため、自らの仕入債務の支払のために手形を裏

書きして譲渡したり、手形の支払期日前に金融機関に割引の依頼をしたりして現金化することが

できます。割引率は、支払期日の長短、手形振出人・裏書人の信用や、割引先の金融機関など

によって異なります。ただし、割引した手形が不渡りになった場合は、同じ振出人の手形はすべて

買い戻さなければならない点に注意しましょう。

 

[3] 訴訟手続が簡単である

 

支払を拒絶され不渡りになっても、手形訴訟という簡易・迅速な特別の訴訟手続が利用できます。

判決は早ければ3カ月程度で下りるので、効率的な法的回収ができます。

 

[方法その2] 単名手形を回り手形にする

 

手形回収する際は、できるだけ単名手形(取引先が直接振り出した手形)で回収するのではなく、

第三者が振り出し、取引先が裏書きした回り手形に変更してもらいましょう。

 

単名手形は、取引先が振り出した手形ですから、万一、取引先が倒産したら、手形金の請求は取

引先にしかできません。回り手形なら、裏書人である取引先が倒産しても、第三者である振出人

に対しても請求できます。

 

取引先が振り出した手形でも、この手形の券面に第三者からの手形保証をもらったり、裏書きをし

てもらったりする方法もあります。手形の保証人や裏書人は、手形の所持人に対して、振出人と

同一の支払義務を負うことになるので、回り手形にするのと同じ効果があります。

 

このように、回り手形や保証付きの手形は、決済上は債権回収に非常に役に立ちます。しかし、

回り手形が融通手形の見返りに振り出された手形(これも融通手形)であったり、振出人が全く無

資力であったり、裏書人や保証人が事実上倒産していて支払能力がなかったりすれば、回り手形

にした意味がなくなってしまいます。

 

回り手形をもらうときは、次の点をチェックことが大変重要です。

・ 振出人が手形を決済するだけの資力のある者かどうか

・ 裏書きしている者が、同様に手形金の請求(遡求)を受けても支払できるだけの信用の

ある者かどうか

・ 実際の取引においてやり取りされた手形かどうか

 

【担保や保証などで具体的に保全する】

 

[方法その3] 買掛金(相殺原資)を作る

 

取引先の商品を購入して他社に転売することができないか検討しましょう。取引先に対して買掛

金ができれば、万一の時に売掛債権と対等額で消滅させることができるからです。これを「相殺」

といいます。

 

取引先が債権の支払いをしない場合に、相殺ができれば代金を現金回収したのと同じ効果を

もたらしますので、実質的に担保としての意味合いがあるものになります。さらに基本契約書に

いつでも相殺できる「相殺予約条項」を入れておくとより強力な回収手段となります。

 

但し注意点として、支払いの際に手形を振り出してはいけません。手形を渡すとそれを決済しな

くてはならず、相殺の原資としては認められなくなります。

 

[方法その4]  担保・保証の取得を交渉する

 

現金や手形・小切手で直ちに債権回収できない場合は、担保・保証を取るなど、債権保全に注力

する必要があります。倒産前に取引先を納得させて担保をうまく取れるかどうかは、後々の回収

に非常に大きく影響してくるからです。

 

なお、取引先が中小企業である場合は、経営者から個人保証を取っておくべきでしょう。経営者に

よっては、会社を倒産させておいて、財産だけはしっかりと個人名義にして保全し、会社と個人は

別法人格だから個人としての支払義務はないと開き直るケースがあるからです。もちろん、会社

法の規定に基づいて取締役や監査役に対して責任を追及することもできますが、責任の立証は

簡単ではありませんので、やはり個人保証は取っておくべきでしょう。

 

ただし、個人保証を入手してもその個人に資力・資産がなければ、その契約書は単なる紙切れで

しかありません。必ず保証人の裏付け資産を調査し、もし社長に資産がなければ、資産のある家

族やほかの役員から個人保証を入手して保全を図る必要があります。保証人を通じて、間接的に

社長に対し経営の責任を持たせる効果も期待できます。また、個人保証については将来的に民

法改正が控えており、契約内容に注意が必要です。この点は次回に取り上げます。

 

[方法その5]  保険・保証・ファクタリングを活用する

 

取引先から直接担保や保証を取得できない場合、与信リスクを他社に移転する方法もあります。

具体的には、取引信用保険、債権保証サービス、ファクタリングなどが挙げられます。

 

 

次回以降は、担保・保証の種類や取得方法についてご説明します。

 

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