りすもん与信管理講座「営業のための法律基礎知識『製造物に関する法規制』」

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 りすもん与信管理講座
           営業のための法律基礎知識『製造物に関する法規制』      
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昨今、食に関わる異物混入の事件/事故が紙面をにぎわせています。
自社の製品、サービスを顧客に販売する営業にとって、これらの「製造物」に関する
法知識は必要不可欠なものです。

今回は、特別にリスクモンスターのeラーニングメニュー「サイバックスUniv.」
の「営業のための法律知識基礎講座」の中から『製造物に関する法規制』の項目
を抜粋し、ご紹介いたします。


『製造物に関する法規制』


1 欠陥商品の責任

企業から引き渡された商品に欠陥があった場合、商品の種類によっては広範囲な
消費者に損害を生じさせる恐れがあります。

損害については、自動車の構造に不完全な点があって事故を起こしてしまったとか、
食品や医薬品に有害物質が含まれていたため、健康を害してしまったとか、
マンションを購入したが、設備機器の欠陥により火災を起こしてしまったなど、
さまざまであり、また、欠陥についても、商品製造上の欠陥、商品取り扱いに
関する消費者への指示・警告上の欠陥、商品製造に使用された原料・材料などの
欠陥、商品の運送・販売により生じた欠陥などさまざまな態様に分けることができます。

購入した商品に欠陥が存在している場合、消費者は誰に法的責任を追及することが
できるでしょうか。

まず、欠陥商品を売った販売業者は、債務不履行責任(民法第415条)または
瑕疵担保責任(民法第570条)を負います。製造業者は、製造物責任(PL法)
を負うことになります。立場により、このように法的責任が異なります。


2 販売業者の契約責任
 
売買契約が有効に成立しても、販売業者が正当の理由がないのに完全な商品の
引渡しを履行しないとき、あるいは売買契約が履行される前に商品が消失したり
するときは、まず、販売業者と消費者との間の契約責任の追及が考えられます。
契約責任追及の問題として、債務不履行責任、危険負担、担保責任について
説明します。

1. 販売業者と債務不履行責任

債務不履行とは、債務の本旨に従った履行がなされない場合で、その責任が
販売業者にあるときです。たとえ債務の履行(商品の引渡し)がなされても、
それが法律の規定、売買契約の趣旨、取引慣行、信義誠実の原則などに従ったもの
でないとき、販売業者の故意(わざと)、あるいは過失(不注意)、または
販売業者が履行のために使用した者(店の主人に対する店員、建築請負業者に
対する工務店)の故意・過失があれば、いわゆる不完全履行として債務不履行
責任が生じます。

 1) 販売業者が引渡した商品に欠陥がある場合
  (気が抜けていたビールや、病気もちの犬・小鳥などを引渡したとき など)
 
 2) 販売業者が商品引渡しの際に必要な注意を怠った場合
  (販売業者が商品を届ける際に、不注意で建具に傷をつけてしまったとき
   など) 

特に、2)の場合は、不法行為(民法第709条)による販売業者の責任を問う
ことも考えられますが、消費者の保護をより厚くするためには販売業者と
消費者との間の契約責任を問うことが妥当です。すなわち、販売業者は消費者に
対して、信義誠実の原則にしたがって商品の引渡しをなすべき義務を負っている
ことは(同法第1条第2項)当然ですが、完全な物を引き渡すとともに、引渡しに
際して消費者に損害を与えないように注意すべきことも含まれています。

不注意で建具を傷つけた業者は、民法第1条第2項の義務に違反して不完全履行
による債務不履行責任を負います。不完全履行の場合、消費者は販売業者に対して、
あらためて完全な商品を引き渡すよう請求することができます。完全な商品を
引き渡すことが不可能な場合、消費者は催告をすることなく、直ちに売買契約を
解除できます。さらに商品が食品で、消費者がそれを食べて病気になったときは、
その損害賠償も請求することができます(同法第415条)。

2. 販売業者と担保責任

販売業者の担保責任は、売買契約通りの取引が行われるように、民法が両給付の
公平および一般取引の信用を保護する目的で認めた無過失責任です。

1)権利の瑕疵に対する販売業者の担保責任

 (1) 売買の目的物の全部が他人の権利の場合の責任(同法第561条)
 (2) 売買の目的物の一部が他人の権利の場合の責任(同法第563条)
 (3) 数量を指示して行う売買において数量不足などの場合の責任(同法第565条)
 (4) 売買の目的物に占有を内容とする権利などがある場合の責任(同法第566条)
 (5) 売買の目的物である不動産に先取特権・抵当権がある場合の責任(同法第567条)

このように権利に瑕疵(欠陥、キズ)がある場合には、消費者が販売業者に
対してその過失の有無を問わず契約解除、代金減額請求、損害賠償請求などが
できると規定(同法第561条~第569条)されています。

2)物の瑕疵に対する販売業者の瑕疵担保責任

権利の客体である売買の目的物自体に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者が負う
担保責任を瑕疵担保責任といいます(同法第570条・第566条)。

瑕疵担保責任が成立するための要件は、

 (1) 売買の目的物が原始的特定物(この家、この自動車というように売買にあたって
   その目的物の個性に着目して指定した場合をいう)であること
 (2) 売買契約が成立する時点で、すでに特定商品の品質、性能が売買契約の趣旨に
   合致しないこと
 (3) 隠れた(消費者が注意しても発見できないような)瑕疵であること

が必要です。(3)については、つまり、消費者が善意・無過失でなければ
瑕疵担保責任は発生しません。

瑕疵担保責任の内容は、瑕疵があるために売買契約の目的が達成されない場合、
消費者が契約を解除することができ、瑕疵が売買契約の目的を達成されない程に
重大ではない場合、消費者が損害賠償の請求をすることができるというものです
(同法第566条、第570条)。契約の解除または損害賠償の請求は、消費者が
その事実を知った時から1年以内にしなければなりません(同法第566条)。

3.販売業者と危険負担

「危険負担」とは、契約成立以後に発生した商品の瑕疵が、販売業者側の
故意・過失に基づかない原因で履行不能となり(販売業者側に故意・過失が
ない点で、債務不履行責任の生じる場面とは異なります)、一方の商品引渡債務が
消滅してしまった場合に、他方の代金支払債務が消滅するか否かの問題です。

例えば、建物の売買で引渡しを受ける前に目的の家屋が、隣からの出火によって
焼失してしまったような場合、販売業者の家屋引渡債務は、もはや履行不能である
ため消滅してしまいますが、この家屋焼失の危険は販売業者と消費者のどちらが
負担するかという問題です。

民法では特定物に関する物権の設定または移転を目的とする売買契約の場合は、
生じた危険(商品の消滅の損害)の負担が債権者(消費者)にかかる「債権者主義」
をとっています(同法第534条)。

なお、不特定物が特定された場合も同様です(同法第534条2項)。それ以外に
生じた危険負担は債務者(販売業者)にかかる「債務者主義」をとっています。
実際には民法第534条の債権者主義は強行法ではないので、土地家屋売買契約書
の中で、目的物引渡前に生じた危険を販売業者が負うという特約をつけることが多く、
これによって、消費者は代金支払いを免れることができます。

危険負担は企業責任としては特殊な形態ですが、債務不履行責任、担保責任に
ついても、消費者に人体上の被害が発生したなど被害額が大きい場合に、消費者側は、
資力のない販売業者を相手に責任を追及しても意味がないので、もっぱら資力のある
巨大なメーカーを相手にして訴える傾向にあります。

そこで、消費者は無資力の販売業者に代わって債権者代位権(同法第423条)により、
卸売業者や製造業者に損害賠償などの責任を追及することができるかの問題が
存在します。しかし、販売業者と卸売業者・製造業者との間の売買契約関係が
不明確な点で困難性があると思われます。


3製造業者の製造物責任
 
製造物責任(PL)とは、製造物の欠陥によって、消費者の身体や財産に被害が
生じた場合、メーカーに過失がなくても、メーカーに損害賠償責任を負わせようと
する制度です。商品そのものに、社会的信頼に応える安全性の不備があり、
消費者などに身体・生命・財産上の損害を与え、それが全国的に拡散するとき、
その賠償責任を製造業者に負わせるべきだとする考え方です。

従来、製造物の欠陥が原因とされる損害賠償請求については、民法第709条の
「故意または過失により他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を
賠償する責任を負う(不法行為責任)」という規定に基づいて、加害者の
「故意・過失」を被害者が立証する必要がありました。

製造物責任法では、製造物責任を「過失」の証明から、「欠陥」の証明だけ
で問える(無過失責任)と改め、消費者が製造物の責任を容易に問えるよう
にしました。

 

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