与信管理講座「決算書の現況調査法」(第6回)
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与信管理講座「決算書の現況調査法」 第6回
~まとめ~
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前回までの4回にわたり取引先の決算書、とりわけB/Sの分析をする際に、
各勘定科目の妥当性を検証・確認を行い、修正を行う方法について説明いたしました。
最終回の今回は主要な手続や共通項目についてまとめたいと思います。
15. まとめ
① 各資料の準備
まず準備すべきは決算書と勘定科目内訳書(明細)です。それも5期分程度は確保します。
これに従い、勘定ごとに実在性の検討、網羅性の検討、評価の妥当性の検討を行います。
全ての勘定を洗うのは時間的に難しい場合は、予め5期分の決算を比較し、勘定の増減が
大きいもの、または業界標準値と比較して極端に大きいものを重点的に調べるようにします。
その場合に必要な定款、株主名簿、法人税申告書、登記簿謄本、各種台帳、月次試算表・
資金繰り(予定)表、社内規程類、契約書類などは事前に相手先に準備してもらうように
します。
② 通常の決算修正項目の織り込み
会社が従来の決算期において実施してきた会計処理方針を確かめた上で、一般に認められる
会計処理と比較して妥当なものかどうか検討したうえで、修正するかどうかを決めます。
検討すべき主な項目は以下の通りです。
・ 売上・売掛債権の確定
・ 減価償却費の確定
・ 各種引当金の取り崩しと繰り入れ
・ 経過勘定(前払・未払・未収・前受)の修正
・ 時価がある資産(有価証券、土地等)の評価の修正
・ 外貨建資産・債務(現金、売掛金等)の評価換え
・ 仮勘定の整理
・ 税額の修正
③ 簿外資産・負債の計上
通常注記になる勘定や、保証債務等の偶発債務・損失など簿外となっている項目について
評価し、計上します。検討すべき主な項目は以下の通りです。
・ 割引手形、裏書手形の計上
・ 保証債務の計上
・ 偶発損失引当金の計上
④ 資産評価額の修正
基本的には会社の清算ではなく、事業継続を前提にして資産の評価を行います。また
取得原価を基準にしたうえで不良債権、不良資産の評価減が適切に行われているかどうかを
検討します。特に代表者・役員やその一族、関係会社向けは要注意です。検討すべき
主な項目は以下の通りです。
・ 売掛債権の回収可能性
・ 棚卸資産、有価証券、土地などの固定資産の評価増減
・ 貸付金・仮払金・立替金の回収可能性
・ 繰延資産の資産性
⑤ 担保提供資産とこれに対応する債務の把握
資産評価とは離れますが、取引先有事の際に備え、質権(預金・有価証券)、
譲渡担保(売掛債権、棚卸資産)、抵当権・根抵当権(土地・建物)など
担保設定されている資産とそれに対応する債務を把握しておきます。
また相殺される可能性が高い債権債務を確認します。特に代表者一族、金融機関、
主要取引先を中心に調べます。
これにより相手先が事業を生産した場合に回収できる見込み額を算定できるようになります。
⑥ 実質自己資本の算定
①~⑤までを行うことで資産および負債の修正を行なった結果により、実質的な
自己資本(純資産)を計算します。これを踏まえ、取引先の評価および意思決定を
行うようにします。
6回に亘り、決算書の現況調査方法について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
現実の審査の場面で、各勘定の調査を行うことは殆どないかもしれません。しかし、
決算書は作られるものと認識し、決算書の表面上の数字に惑わされず、実質的な自己資本を
算定することで取引先の評価をしたいものです。
中小企業金融円滑化法の期限切れが来年3月に迫り、金融機関は融資先の選別を始めている今、
事業会社の与信管理は取引先の情報収集に努め、しっかりとした評価を行い、重点的に
管理をすべき先を絞り込み、適切な対処を打っていくことが求められています。
今こそ与信管理責任者および担当者の正念場。リスクマネジメントを強化し、この難局を
乗り切っていきましょう。
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【著者】リスクモンスター データ工場
会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
担当する、いわばリスクモンスターの“心臓部”。
分かりやすく精度の高い情報を、お客様により早くご提供することをモットーにしている。
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【編集発行】
リスクモンスター株式会社
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