与信管理講座「決算書の現況調査法」(第3回)
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与信管理講座「決算書の現況調査法」 第3回
~棚卸資産、有価証券・投資有価証券・出資金~
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取引先の決算書、とりわけB/Sの分析をする際に、各勘定科目の内容が妥当
であるのかを分析し、疑わしい場合は資料の提出を依頼して、中身を確認する
ということは非常に重要です。
本講座では前回から各勘定科目の説明を始めており、当座資産である現金から
売掛金までの解説を行いました。3月決算の会社はすでに税務申告や株主総会
が終了しており、取引先の決算書を受け取って分析することが増えてくる時期
です。しっかり分析して、取引先の評価を間違えないようにしたいものです。
今回は棚卸資産と有価証券、有形固定資産についてです。
7.棚卸資産(在庫)
棚卸資産は特に粉飾が行われやすい勘定といえます。回転期間分析などを行い、
業界平均等と比較することで、予め金額の妥当性について見当を付けた上で
調査します。
① 棚卸資産の受払記録を確認し、売上・売掛金、仕入・買掛金の計上との
整合性を確かめる
受払とは、ものの受入(仕入)、払出(出庫)のことで、棚卸資産を管理する
ためには、受払について記録し、数量と金額を管理する必要があります。
そして数量確定後、各社で定められた払出方法を用いて原価金額および在庫金額
を算出することとなります。棚卸資産の受払管理の結果により、在庫や収支に
大きな影響を及ぼすことがあるため、適切な受払管理を行っているかどうかは
非常に重要なこととなります。
受払管理を行う事により、以下のメリットが生じます。
・正確な棚卸資産の残高を把握することが可能となる。
・適正な在庫水準を保つことが可能となる。
・円滑な仕入れと販売活動を行うことが可能となる。
② 数量は実地棚卸の結果に基づいているか
行っていない場合は、数量算出方法の合理性につき検討したか
在庫管理は受払管理の他、実地棚卸を行うことにより、より正確な残高を把握
できるようになります。会社によっては、定期的に社員総出で在庫の個数を
数えているところもあります。実際に数えたのか、帳簿での計算なのかによって
確実性が変わってきます。その方法について確認し、実地棚卸を行っていない
場合は金額をどのような方法で把握しているか確認する必要があります。
③ 単価は、会社所定の評価基準、評価方法に準拠しているか確かめる
棚卸資産の評価方法は、会計上いろいろなやり方があります。
代表的なものとしては、
・個別法(個々の実際の原価によって期末の在庫価値を決める)
・先入先出法(先に入った順番で払出が行われたとみなして在庫価値を決める)
・後入先出法(後から入った順番で払い出しが行われたと見なして在庫価値を決める)
・平均原価法(取得した棚卸資産の平均原価を算出して在庫価値を算定する)
などがあります。
一定の方法を用いて行っていればよいのですが、決算期により収益が出るように
やり方を変えているようでは問題です。
④ 現地視察を行い、実地棚卸の方法について確認する
可能な限り倉庫や工場など現地調査を行い、在庫の実在性について確認します。
その場で実地棚卸はできませんが、現場にいって責任者に話を聞きながら
実地棚卸の方法についてヒアリングすれば、その精度の高低について確認する
ことができます。
⑤ 外部に預けている棚卸資産の実在性を確認する
外部の倉庫等に保管している棚卸資産については、預り証などを閲覧することで
実在性について確認をします。
⑥ 担保提供資産およびこれに対応する債務を把握する
譲渡担保が設定されている棚卸資産があれば、契約書等で確認します。
また、それに対応する債務を把握します。現地調査の際、担保権者が設置した
プレートや立て札などがないか注意して確認します。
⑦ 比較B/S・P/L、月次決算の内容と、受払記録、責任者へのヒアリングから
架空取引および特殊計上の有無を確かめる(3~5期の比較)
B/S・P/Lを比較して棚卸資産回転期間が大きく変化している(特に上昇している)
決算期末や、月次決算で棚卸資産の価額に大きな変化が生じている月の会計処理は
特別に詳しく調べます。その際、受払記録を閲覧したり、責任者にヒアリング
したりすることで、確実性を高めます。
そこで、架空在庫や在庫評価が実態と大きく異なるものがないかを確かめます。
⑧ 評価額の妥当性を確認し、評価増減額の算定を行う。
①~⑦から棚卸資産の評価額の妥当性を確認し、評価の増減額を算定し、
修正B/Sに反映させます。評価の増減額分は、純資産を増減させることで
バランスさせます。
8.有価証券、投資有価証券、出資金
有価証券は、取得価格で計上されることが多いのですが、時価が大きく変わって
いる可能性があります。基本的に時価に評価を修正させます。
① 実査、残高証明書、預り証と突合する
上場株式は電子化されているので、実査ではなく残高証明書によって確かめること
になります。実際に数えるのは非上場の株式になりますが、非上場会社の株式も
株券不発行の会社が多く、株主名簿の記載を確認するしかありません。
必要な場合はその会社に株主名簿記載事項証明書の交付を請求します。株券を所持
している場合はその実在を実査により確認します。
② 担保差入有価証券およびこれに対応する債務を把握したか
質権や譲渡担保が設定され、差し入れている有価証券があれば、契約書等で確認
します。また、それに対応する債務を把握します。
③ 流動・固定区分および勘定科目区分は正確か
基本的に、市場性があり一時的所有の場合は流動資産の有価証券勘定に、市場で
取引されていない場合や長期保有目的の場合は固定資産の投資有価証券に分けて
計上されます。内容を精査し、区分が正しいか確認します。不明な場合は、
固定資産に含めて分析するほうがよいと考えられます。
④ 受取利息・配当金と比較し、簿外の有無を確かめる
P/Lの受取利息・配当金を確かめ、計上されている有価証券以外からの配当など
がないかを確認します。
⑤ 評価額の妥当性を検討し、B/S修正のための評価減額の算定を行う
・市場性のある有価証券は、市場価格を基礎にする
・市場性のない有価証券は、一株あたり純資産額を基礎とする
・子会社、関係会社株式は、子会社の位置づけを加味して算定する
以上です。次回は、有形固定資産とその他の資産について説明します。
【著者】リスクモンスター データ工場
会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
担当する、いわばリスクモンスターの“心臓部”。
分かりやすく精度の高い情報を、お客様により早くご提供することをモットーにしている。
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【編集発行】
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