与信管理講座「決算書の現況調査法」(第2回)

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    与信管理講座「決算書の現況調査法」 第2回 ~現預金・売掛債権~    
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前回は、取引先の決算書が妥当かの確認をしっかり取るべき先の財産調査方法の
考え方、計画の立て方について解説しました。今回から勘定科目ごとに通常必要と
なる調査内容を網羅的に説明していきます。

調査計画を立案する時には、取引先の状況を勘案して取捨選択しながら調査実施
の要否を判断することが大切です。チェックリストとして利用していただければ幸いです。

 

3.現金

① 実査、帳簿突合などにより現金勘定残高の実在性を確かめる
現金は数えれば分かりますので、実際に金庫などに保管している現金を見せてもらい、
帳簿や管理表とあっているか確認します。通常は出納担当者が現金を実査し、上長に
確認印をもらうという手順で管理しているのが普通です。
管理状況も合わせてチェックし、現金以外のもの(回数券や小切手など)が含まれて
いるような場合は、換金が容易かどうかをチェックすることが必要です。

② 外国通貨のレート換算は妥当かを確認する
現金は「円」ばかりとは限りません。他の通貨であればレートを調べ、実勢レートで
換算されているかをチェックします。

 

4.預金

① 実査、残高証明書または通帳と帳簿の突合により預金勘定残高の実在性を確かめる。
残高証明書とは金融機関が顧客に対して発行する、特定の日付における預金残高を
証明した文書のことです。緊急の場合は通帳でも仕方ありませんが、なるべく直近の
残高証明書を入手し、預金の実在性を確かめてください。

② 外貨預金のレート換算は妥当かを確認する
現金は「円」ばかりとは限りません。資産運用を目的として外貨預金等を行っている場合、
レートを調べ、実勢レートで換算されているかをチェックします。

③ 担保提供預金及びこれに対応する債務を把握する
取引先に質権を設定され担保として提供している場合や、固定預金として拘束され銀行が
事実上担保として押さえている場合などがあります。これらの場合は、対応する買掛債務や
借入金を確認し、資金繰りに使用できる可能性があるか否かを確認します。

④ 預金利息は平均残高と平均利率から照らして適当かを確認する。
念のため預金利息が平均残高と平均利率を掛け合わせた数値と近似値になっているかを
確認します。かけ離れた数値である場合、預金の実在性を疑う必要があります。

⑤ 預金、小切手の管理状況を検討する
債務、特に支払手形や振出小切手の期日管理を行う必要があります。これらの管理状況が
疎かになっていると、不慮の事故で不渡りなどが発生し、倒産状態に追い込まれてしまう
可能性があります。

⑥ 今後の資金繰り状況を把握し、今後の見込みを確認する
財産調査とは直接的に関係はありませんが、⑤でも記載の通り6ヶ月程度先までの
資金繰り計画を把握できていることは非常に重要です。資金繰り表の妥当性を確認し、
資金不足に陥る恐れがないかを確認します。


5.受取手形

① 手持手形は実査し、帳簿と突合して実在性を確かめる
手持手形とは、顧客から受け取り社内にある手形のことを指します。金庫などに保管
している手形を見せてもらい、帳簿とあっているかを確認します。

② 取立依頼手形は、取立手形通帳や預り証と帳簿を突合して実在性を確かめる
銀行等に取り立てに回している手形は、取立手形通帳(金融機関によって呼び名が
違うかもしれません)や金融機関の預り証を確認し、帳簿とあっているかを確認します。

③ 裏書手形は領収書等と突合して実在性を確かめる
裏書手形と次の割引手形は、決算書上の受取手形からは除かれて、脚注表記されて
いる可能性があります。場合によっては脚注表記が省略されていることもあります。
その場合でも必ず金額を確認し、取引先から受け取った領収書などと帳簿を合わせて確認します。

④ 割引手形は残高証明書、手形割引依頼書等と突合して実在性を確かめる
割引手形は、金融機関が発行する残高証明書や手形割引依頼書の写しを見て、
帳簿とあっているかを確認します。また借入金と合わせた金額と平均利率を比較して
支払利息が妥当かを確認することも大切です。
利息が多い場合は、簿外となっている借入金や割引手形がある可能性があります。

⑤ 担保差入手形とこれに対応する債務を把握する
実務が煩雑なのであまり行われないですが、譲渡担保契約を行い担保提供している手形、
または契約なしに金融機関等に預けている手形などがある場合は、これに対応する
債務を把握します。子会社や一族経営の会社について担保提供している可能性もあります。

⑥ 直近の売上高、回収条件との比較分析を行う
売掛金と合計して金額が大きい取引先に関しては、直近の取引先別売上表と回収条件と
照らし合わせて、金額が妥当かを確認する必要があります。架空の売上などがないか、
融通手形はないか、回収が滞っている先がないかなどを確認します。

⑦ 回収可能性の検討を行い、B/S修正のための回収不能見込額および設定すべき
  貸倒引当金の算定を行う
不渡手形や期日延長(手形ジャンプ)を行っている手形、子会社・関連会社の手形、
金額が固定している手形など回収可能性が疑わしい手形については、減額修正する必要があります。 

⑧ 外貨建受取手形のレート換算は妥当か
外貨建て手形の場合は、レートを調べ、実勢レートで換算されているかをチェックします。


6.売掛金

① 帳簿突合、残高確認、証憑突合などから売掛金勘定残高の実在性を確かめる
受取手形と違い、現物を確認することが困難であるため、注文書・納品書・請求書などの
証憑類を確認し、帳簿と合っているかを確認します。主要な取引先は残高確認などを送付
して確認することも検討します。

② 担保差入売掛金およびこれに対応する債務を把握する
譲渡担保契約を行い担保提供している売掛金などがある場合は、これに対応する債務を把握します。

③ 直近の売上高、取引条件との比較分析などから売掛金残高の網羅性を確かめる
受取手形と合計して金額が大きい取引先に関しては、直近の取引先別売上表と
回収条件と照らし合わせて、金額が妥当かを確認する必要があります。架空の売上など
がないか、回収が滞っている先がないかなどを確認します。

④ 割賦基準・工事進行基準など特殊な売上計上基準については、処理基準、処理手続
    の妥当性を検討する
割賦基準とは、割賦販売(分割払い条件での販売)において、代金回収もしくは回収日
の到来をもって売上を計上する方法です。また工事進行基準とは工事期間中、工事の
完成度合いに応じて工事に関する売上を計上する方法です。これらのように、商品・製品
の受渡しで売掛金が計上されない取引は売上計上が妥当かどうかを確認する必要があります。

⑤ 月次B/S・P/L、月次売上推移表から決算日前後の売上・値引き・返品の吟味ならびに
    責任者への質問などを行って仮装・架空取引および特殊取引の有無を検討する
架空で売上を計上し、粉飾を行っている可能性もありえます。また期末に売上・利益を稼ぐため、
押し込みで販売を行っている場合もあります。
月次決算を参照しながら分析することで、そのような取引の有無を確認することができます。

⑥ 回収可能性の検討を行い、B/S修正のための回収不能見込額および設定すべき
  貸倒引当金の算定を行う
子会社・関連会社向けの売掛金、金額が固定化している売掛金など
回収可能性が疑わしい手形については、減額修正する必要があります。

⑦ 外貨建売掛金のレート換算は妥当か
外貨建ての売掛金の場合は、レートを調べ、実勢レートで換算されているかをチェックします。

 

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 【著者】リスクモンスター データ工場
  会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
  企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
  担当する、いわばリスクモンスターの“心臓部”。
  分かりやすく精度の高い情報を、お客様により早くご提供することをモットーにしている。
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