与信管理講座「決算書の現況調査法」(第1回)

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       与信管理講座「決算書の現況調査法」 第1回     
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これまで6回に亘って倒産会社の財務指標の傾向について解説してきました。
しかし、信用調査に際しては比率の議論だけでなく、貸借対照表(B/S)の構造の
特徴を理解し、財産状況を分析し把握すること
が非常に重要です。

特に取引先にとって高いシェアとなる与信限度設定をする際、M&Aの意思決定を
する際、または手形ジャンプの依頼など再建の見込み判断を緊急で行う際などには、
詳しい財産調査を行う必要が出てきます。専門家の手を借りることもあると思いますが、
自ら実施をせねば間に合わないこともありえますので、審査担当者としてはその適切
かつ効果的な調査方法を知っておくべきでしょう。

今回から6回に亘って企業の財産状況調査法について基本的な考え方、調査計画、
手順、B/S各勘定科目調査のポイントについて解説します。


調査の基本的な考え方

財産の調査の目的は、現在の貸借対照表の作成にあるのではなく、取引・投融資の
可否などの意思決定を行うことにあります。
したがって、調査もこの観点から行う必要があります。


①実在性の検討を行う
相手先作成のB/Sの資産・負債が現実に存在し相手先に帰属するものかどうか、
架空のものがないかを検討します。

②網羅性の検討を行う
相手先企業に帰属するものが全てB/Sに計上されており簿外のものがないかを
検討します。特に負債については綿密な確認が必要です。

③評価の検討を行う
事業継続を前提とし、取得原価を基準にしたうえで不良債権、不良資産の評価減
が適切に行われているかどうかを検討します。

④外部証拠によって判断する
内部資料について信頼性が薄い場合は、在庫の実地棚卸、外部債権者・債務者
への残高確認など外部証拠によって判断します。しかし、時間的制約などから
省略せざるを得ない場合もありえます。

⑤重要項目を絞り込む
調査目的に照らして重要性を判断し、省略してもよい手続は徹底的に省略し、
重要項目について十分に調査し、合理的な判断が行えるようにする必要があります。
したがって、事前に調査計画を立てておくことが重要となります。


調査計画の立案

①事前資料提出の依頼
予め提出を依頼する資料について連絡します。必要な資料については以下のもの
が考えられますが、事業内容によって追加・削除して依頼します。

【例】定款、商業登記簿謄本、株主名簿、決算書・法人税申告書(勘定科目明細・全別表)5期分、
      固定資産台帳、直近の月次試算表・資金繰り(予定)表、子会社・関連会社決算書、
      土地建物の不動産登記簿謄本、社内規程(特に就業規則、退職金規程、賞与規程)、
      土地建物の賃貸借契約書、借入明細、保険契約書、取引先との重要契約、リース契約書など

②調査重点項目の具体的な調査方法の検討
実査が必要な項目、棚卸資産・固定資産の実地調査、銀行残高・取引先債権・債務の
確認等は可能かどうか事前に調査し、具体的な方法について検討しておきます。

③不足資料の確認
①②について不足する場合は、相手先の事務処理能力等も勘案の上、再提出を依頼するか、
省略するか、自ら作成するかなどを決める必要があります。

④会社の事業概況の理解
相手先の事業概況を理解し、購買・生産・販売の営業サイクル、取引条件、取引規模等から、
常識的に考えて損益や財務がどのような構造をしているか、またはしているべきかをイメージ
しておく必要があります。ポイントを外した調査を行い、時間のロスが起きないようにします。

⑤事前資料の整合性確認
入手した決算書、法人税申告書、付属書類に整合性が確保されているかを確認します。


次回から、いよいよ個々の勘定科目の検討でチェックすべき項目について解説します。

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【著者】リスクモンスター データ工場
 会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
 企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
 担当する、いわばリスクモンスターの“心臓部”。
 分かりやすく精度の高い情報を、お客様により早くご提供することをモットーにしている。
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