与信管理講座「倒産事例から見る財務指標の傾向」(第5回)

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 <CONTENTS>
   ■与信管理講座「倒産事例から見る財務指標の傾向」(第5回)
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        ~与信管理講座「倒産事例から見る財務指標の傾向」~     
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与信管理上注目すべき財務指標を、倒産企業の分析データから解説しております。

第5回 「自己資本比率」

 

1.「自己資本比率」とは?

自己資本比率とは総事業資金調達額(総資本)に占める自己資本(自己資金)の割合で、

企業財務の健全性・安定性を総合的に表す指標です。会社の資金調達は債権者から調達

する負債と株主から調達する自己資本で行います。自己資本は返済不要ですが、負債は

返済しなければなりません。自己資本の割合が大きければ、債権者に対する負債の返済に

余裕があるということになります。

一般的に自己資本比率が10%を切ると過小資本、15〜25%程度であればまずまずの水準、

30%を超えると安心な水準と言われております。なお、業績不振会社は損失を内包している

ことが多く、的確な与信判断を行うには、これらの内包されている損失を除いた実質の自己

資本比率を計算する必要があります。

 

自己資本比率はつぎの算式によって求めることができます。

自己資本比率(%)=自己資本/(総資本+割引手形+裏書譲渡手形)×100

 

2. 倒産事例分析

次に、最近の倒産事例より、倒産時における自己資本比率の推移を見ていきます。


1.水谷建設株式会社

(総合工事業、2011年12月1日債権者による会社更生開始申立、負債総額353億円)

 

①会社概要、倒産経緯

・1933年1月創業の重機械土木工事業者。国内大手の1社として大手ゼネコンからの下請けを

 主体に、ダム、空港、高速道路、橋梁工事などを手掛けてきた。

・政治資金規正法違反事件で注目を集め、過去の粉飾疑惑や公共工事受注に関するコンプライ

アンス違反等で、一部の金融機関から預金凍結されたことから、先行きを懸念され債権者

(前社長)から法的措置の申立てを受けることとなった。

 

 

②自己資本比率の推移

決算期             2010/8     2009/8       2008/8

売上高(千円)       41,277,680     34,732,438     32,127,877

自己資本比率(%)      1.7                1.0               5.1

売掛債権回転期間(ヵ月)  3.0              2.2              1.4

 

・2006年の法人税違反による元会長の逮捕に伴い信用力が大幅に失墜、金融機関からの

支援も厳しい状態に陥っていた。収支の安定性は乏しく、特に利益面では、乱高下が繰り

返されていた。

・自己資本比率は5%を満たない水準となり、未収入金やその他流動資産、長期滞留債権が

過大であったことから実質的な債務超過が続いていたと思われる。売掛債権回転機間が

2008年以降増加基調で推移しており、取引条件の悪化や決算操作等の可能性が窺え、

過去の粉飾疑惑を考慮すると、収支実態はさらに低調な状態であった可能性が否めない。

 

3.ポイント

リスクモンスターでは、自己資本比率別の倒産確率を集計し、会員サイト上の「アナリスト

モンスター」にて公開しています。 全体で見ると債務超過(自己資本比率がマイナス)の

企業は倒産確率が高いことはもちろんのこと、自己資本比率が10%未満になるとF格の

倒産確率に近づいてくることが分かります。自社の審査基準の見直しに是非参考にして下さい。

 

 

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【著者】リスクモンスター データ工場
会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
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