会社分析のポイント(4)~売上高・利益・自己資本~

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                                     リスクモンスター株式会社 メルマガ事務局
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 <CONTENTS
   ■与信管理講座「企業の評価ポイント」(第4回)
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      ◆◆関連部署等にもご回覧頂き、基礎知識の習得にお役立て下さい。◆◆
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            ~与信管理講座「企業の評価ポイント」~     
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前回に引き続き、書籍『日本を元気にするリスモン式与信管理力』(2010年4月発行)
をもとに会社分析の評価ポイントをご説明してまいります。 


第4回:会社分析のポイント(4)

今回は、【図表4-1】の15項目の企業情報のうち、⑫売上高⑬利益⑭自己資本における 

与信管理上のチェックポイントをご説明してまいります。 


【図表-1】

⑫売上高⑬利益⑭自己資本

ここでは売上高や利益など「調査対象となる会社の決算情報」の評価ポイントについて 

ご説明していきます。こうした決算情報については、上場企業であればYahoo!ファイナ 

ンスや有価証券報告書から、非上場の会社であれば官報などの決算公告や経営事項 

審査から情報を得られることがあります。 

 
 

 a. 決算公告から自己資本を評価する 
官報決算公告例を基に説明していきたいと思います。【図表4-2】は

非上場企業の決算公告例です。こうした規模の大きくない非上場の会社であっても、会社 

法上は貸借対照表要旨の掲載が義務付けられています。そのため直接取引先から決算書 

を入手できなくても、決算公告を行っている会社であればある程度決算内容を把握すること 

ができます。 

【図表4-2】

 

注目していただきたい部分は、負債及び純資本の部の株主資本の額と一番下の合計額です。 

これらの数値を基に自己資本比率を出すことができます。 

自己資本とは返済の必要がない自前の資金であり、自己資本の割合が大きければ 

大きいほど、借入などの他人資本(負債)に依存する必要がなくなるので、それだけ経営が 

安定すると言えます。自己資本比率は、総資本のうち自己資本がどのくらいの割合を 

占めているかを表す比率であり、会社の安全性を見る際にもっとも基本的で中心的な 

役割を果たす指標です。 

 

自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100(%) 

 

の式で計算され、数値が高ければ高いほど良いと言えます。このように決算書が 

手に入らなくても官報の決算公告を利用することで自己資本比率が把握できるのです。 

 

それでは、自己資本比率はだいたい何%を目安に評価していけばいいのでしょうか。 

自己資本比率と倒産確率の統計データを抽出し分析結果をまとめましたので、 

【図表4-3】をご覧ください。 

【図表4-3】

 

統計データを参考に自己資本比率で会社を評価した場合、おおむね30%を超えている 

会社であれば、財務上の安全性が引き金となって倒産に至るというケースは少ないと 

考えられます。逆に7%を下回る会社には注意が必要であり、マイナス(債務超過)の場合 

には十分な警戒が必要であるということが言えます。 

 

比率ではなく自己資本自体の大きさについてはどうなのでしょうか。会社規模を自己資本で 

見た場合、自己資本が大きい会社は倒産しにくいのかどうかについて、統計データ(※)から 

確認すると、自己資本が大きければ大きいほど倒産しにくいという傾向が見られました。 

特に10億円を超える自己資本額になってくると、ほとんど倒産しないことがわかります。 



. 決算公告から当期利益を評価する 

自己資本の次に、決算公告の下から2番目の(うち当期純利益)に注目してください。 

資本金1億円以下の会社で掲載を義務付けられているのは貸借対照表の要旨のみ 

ですが、決算公告例のように当期純利益を付記しなければならないことになっています。 

損益計算書の項目のうち当期利益は決算公告からでも把握することができるということです。 

では、この当期利益を基に収益性を分析していきましょう。 

 

当期利益をベースに収益性を評価する指標としては、売上高当期利益率があります。 

売上高当期利益率は、売上高に対して会社の営業活動で生み出された最終的な 

当期利益が占める割合を指す比率です。 

 

売上高当期利益率(%)=当期利益÷売上高×100(%) 

 

の式で計算され、これまた高ければ高いほど良いと言えます。実際にどのくらいの 

当期利益率を挙げていけば安全だと判断でき、どこまで下がると危険なのでしょうか。 

 

統計データから(※)確認すると、当期利益率が高ければ高いほど会社は倒産しにくい 

傾向にあると言えます。当期利益率が5%を上回っている会社では倒産の心配はほ 

とんどないといえ、1%にも満たない利益率の会社や赤字の会社には十分な警戒が 

必要であると言えます。 

ただし、売上高は決算公告だけではわからないので、経営事項審査で売上高が判明 

している場合には、こちらを評価指標として利用しましょう。 

 

売上高がわからない場合には、当期利益を比率分析ではなく絶対額で評価することで 

ある程度適切な収益性の評価を行うことができます。統計データ(※)から確認すると、 

当期利益額が1億円以上であれば心配は少なく、利益が不明であったり、200万円未満 

や赤字であれば、十分警戒する段階にあるということが言えます。 
 

 

. 決算公告から資金面を評価する 

取引先の資金繰りの分析と評価は与信管理上大変重要です。ここでは簡単に会社の 

短期的な支払い能力を分析できる指標として、流動比率による資金繰り分析をご説明 

したいと思います。 

 

流動比率とは資産の部に記載されている流動資産を負債及び純資産の部に記載され 

ている流動負債で割った指標のことを言います。式に表すと次の通りです。 

 

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100(%) 

 

流動負債とは1年以内に支払期日が到来する負債のことを言います。この流動負債の 

支払いは当然1年以内に現金として回収される流動資産によって支払われる必要が 

ありますので、流動資産が流動負債を上回っている分だけ、資金繰りに余力があると 

いうことが言えます。逆に流動負債が流動資産よりも上回っているということは、1年間 

の資金繰りで考えた場合に1年以内に現金で入ってくる資産よりも支払いとして出てしまう 

負債のほうが多いということです。一時的にせよ、その足りない分だけ借入金などで 

お金を他から調達して支払いに当てなければなりません。 

 

さらにもし足りない資金を銀行などから調達できないということになると、決済するための 

資金がそれだけ足りなくなるということで、資金ショートを起こす可能性が出てきます。 

したがって流動比率は100%以上の水準を保っているのが望ましいと言うことができます。 

統計データ(※)から確認すると、業界によって流動比率の水準やその資金構造も異なる 

ため一概にはまとめられませんが、やはりどの業種でも流動比率が 

100%に満たないレベルの会社は倒産の危険が高いと言えそうです。 
 

 

d. 取引先が建設業の場合は経営事項審査の項目も評価する 

建設業の場合には、経営事項審査の結果が公表されている可能性があります。 

こちらの財務指標も合わせてチェックをしていきます。 

 

決算公告では公開されていない売上高や企業の資金繰りを示す営業キャッシュフローも 

公開されていますので、こちらの点を重点的に評価していきます。決算公告からだけでは 

算出できなかった当期利益率も、こちらで公開されている売上高を用いれば算出できます。 

まずは売上高当期利益率を算出してください。 

 

そのほかでは経常利益の金額が赤字になっていないかどうかも重要な情報です。 

経常利益とは、本業の儲けを示す営業利益から借入金の利息などの金融収支を差し引いた 

数値であり、会社の総合的な収益力を示す指標です。この経常利益が赤字の場合には、 

会社の収益力に重大な懸念が生じている可能性もあるため注意が必要です。 

 

また経営事項審査では、流動比率よりも詳しく資金繰りの数値を示す営業キャッシュフロー 

を把握することができます。営業キャッシュフローとは、その会社の営業活動によって1年間 

でどれくらいの現金が入ってきたのかを示す数値です。 

プラスであればそれほど問題ではありませんが、マイナスとなった場合は要注意です。 

たとえ利益が黒字であっても、営業キャッシュフローがマイナスであれば実質的には現金が 

流出していたということであり資金ショートを起こす可能性が高くなるからです。 

 

資金面という点では支払利息にも注意しましょう。支払利息が営業キャッシュフローを超えて 

いるような場合、利息を払っていくだけの現金を稼ぎ出すことができていないということになり、 

さらに警戒が必要です。 
 

 

e. 継続取引の場合には 

継続取引の場合には、決算公告と経営事項審査の二つからわかる決算内容を定期的に 

観察し、財務内容の変化を知ることによって、より詳細な信用状態の変化をつかむことが 

できます。具体的には、これまで紹介した自己資本比率などの指標が前回より改善してい 

るのか、悪化しているのかを比較分析していくことが重要です。 

 

また、売上や総資産などが急増したり急減している場合にも警戒が必要です。 

売上や総資産が大きくなっているということは一見すると良い傾向に感じられるかもしれません。 

しかし、自社の実力以上に急速に商売を拡大したり過大な投資を行った結果、売上や資産は 

膨張したものの中身は不良資産ばかり…というケースも珍しくありません。したがって前期と 

比較して、極端に会社の規模が拡大している場合にも警戒が必要であると言えます。 

逆に売上や資産が大幅に小さくなっている場合、当然利益が減少したり、各種費用を賄いきれず 

赤字になったりします。さらに借入金などの負債が減っていないのにも関わらず売掛金などの
将来の現金収入となるべき資産が減ってしまっている場合、資金繰り上に問題が出てくることも多いのです。 

また、資産が急に減っている場合には、お金に困って急いで資産を売却した可能性があります。 

 

 

【チェックポイント】 

〈自己資本〉 

●自己資本がマイナス(債務超過)となっていないか? 

●自己資本比率が警戒が必要な水準に達していないか? 

●自己資本が警戒が必要な金額に陥っていないか? 

 

〈当期利益〉 

●当期利益が不明または赤字になっていないか? 

●売上高当期利益率が1%未満でないか? 

●当期利益の金額が不明であったり、200万円未満もしくは赤字でないか? 

 

〈当期利益〉 

●流動比率が100%を割り込んでいないか? 

 

〈経営事項審査〉 

●売上高当期利益率が1%未満でないか? 

●経常利益が赤字になっていないか? 

●支払利息が営業利益を上回っていないか? 

 

〈継続的な変化〉 

●売上または総資産が極端に増加・減少していないか? 

 

※ リスクモンスターが調査した統計データは会員サイト内『アナリストモンスター』 

から様々な指標や観点でご覧頂けます。

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【著者】リスクモンスター データ工場

会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
担当する、いわばリスクモンスターの心臓部
分かりやすく精度の高い情報を、お客様により早く提供することをモットーにしている。
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