与信限度額ってどう算出するの?
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与信限度制度とは、売掛債権等の与信についての上限額を販売先ごとに設定して、会社が過度の与信リスクを負わないようにする制度です。
与信限度は、収益機会と与信リスクのバランスを見て設定します。営業部門は、限度を超えないように取引を行い、管理部門は超過や設定漏れがないかをチェックすることで管理します。すなわち営業部門VS管理部門の調整弁ということもできます。例えば、管理部門として取引不可の取引先でも、営業政策上どうしても取引を行わなければならないときには与信限度を絞って取引を行うことで調整を行うなどが可能となります。
では販売先に対する与信限度をいくらに設定するかということですが、その設定に当たっては、「必要かつ安全な範囲内」という原則を守らなければなりません。
まずは、必要な範囲とは、月間販売見込み額を算定し、それに回収サイトを掛けることで平均の売掛債権残高を算出して計算します。与信限度は季節ごとのバラツキを考えて、今後の債権残の推移を予想し、若干の余裕を見て設定するとよいでしょう。
回収サイトは、受取手形のサイトだけではなく、手形を回収するまでの売掛期間を考慮に入れる必要があります。したがって、厳密に言うと次のようになります。
(月間売上見込み額×売掛期間月数) + (月間売上見込み額×手形期間月数)
「月末締め翌月末振出、振出日起算90日後手形」という条件であれば、回収サイトは売掛期間が2ヶ月で手形期間が3ヶ月の合計5ヶ月となります。したがって、必要な与信限度は、月間売上見込み額を500万円とすると、500万円×回収サイト5ヶ月=2,500万円となり、多少の変動を考慮して2,500~3,000万円で゙設定します。
次に安全な範囲ということですが、これは自社の財務内容や取引先に対するシェアに基づいて設定されるものとなります。自社の体力を超えて取引を行うと非常に危険ですし、販売シェアを取りすぎると撤退しにくくなります。したがって、与信管理ルールで、販売先の格付ごとに与信限度や売込シェアの目安を決めておくのが一般的です。
格付 | 倒産確率 | 与信限度の上限 | 売込限度額 |
---|---|---|---|
A | 0.05% | 5,000万円 | 取引先の仕入債務の30% |
B | 0.25% | 2,000万円 | 取引先の仕入債務の20% |
C | 0.90% | 1,000万円 | 取引先の仕入債務の15% |
D | 1.50% | 500万円 | 取引先の仕入債務の10% |
E | 2.50% | 200万円 | 取引先の仕入債務の5% |
F | 6.00% | 10万円 | 取引先の仕入債務の0% |
ここで注意をするべきことは、いくら会社が゙定める安全な範囲に入っているからといって、実際の取引に即していない与信限度を設定しないことです。販売先に対する売上が通常の2倍、3倍となっても与信限度を超過せず、変調に気付くことができない可能性があります。売上が増加している原因は、他の取引先が゙撤退を開始しているからということもあり、危険な状態となっている債権をみすみすさらに増加させてしまうこともありえます。必要な与信限度を意識して設定するようにしましょう。
次に安全な範囲ということですが、これは自社の財務内容や取引先に対するシェアに基づいて設定されるものとなりまた取引を進めるうえでは、必要な与信限度を考えると安全な与信限度を超えてしまう場合がありえます。この場合は、担保等を取得する、販売先の動向を何時でも把握できる状態にしておく、などの対策を取ったうえで、1ランク上位の決裁者が取引可否を決定するようなルールを作っておくとよいでしょう。
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